漫画家・桜沢エリカさんの本棚を拝見!「ビビビッのつまったワンダーランド」

クロゼットや机の引き出しと同様、なんだか覗いてみたくなる他人の本棚。各界の大の本好きに、普段は見せない“奥の院”を見せていただきます。(取材・文/大平一枝  撮影/本城直季

ファンタジーとエロティシズム

中学生のころ、地元・板橋区の書店に毎日通っていた。

中学生の頃から『不思議な国のアリス』が好き。訳違い、挿絵違い、装丁違いなどを集めている。水玉は草間彌生の装丁

「『不思議の国のアリス』のファンタジーの世界が好きで、自分とアリスの区別が付いてなかった。まさしく中2病のオタクですね。アリスは、最初は福音館の児童書から集め始め、訳者や絵や装丁違いを今でも集めています」

中学1年の時、小遣いの3000 円をはたいて買った写真家・沢渡 朔さんの写真集。下は同作の少女の数年後を撮ったもの

そんなアリス好きの桜沢エリカさんが中学1年のとき、板橋区下赤塚のショッピングセンターの書店で、3千円の小遣いをはたいて買ったのが『少女アリス』。

『不思議の〜』をモチーフに、10歳のイギリス人少女を追った写真集。ファッションやポートレートで知られる沢渡朔さんが、33歳の時に発表した代表作である。

とはいえ、13歳の桜沢さんが若手写真家の評価を知るよしもない。少女特有のフェティッシュなエロティシズムに純粋にひきつけられた。

「もともと少女が好きなんです。宮沢りえさんの『サンタフェ』とか、当時のGUESSの写真集とか。『少女アリス』は今見ても美しくて妖艶でびっくりします」。

数年後、その少女が大きくなってから撮った2作目も見つけた。「ああ、あの子だ! と。でも少女っぽい前作のほうが好きですね」。

桜沢さんの作品世界に通ずる、感性の原点のようなその本は、まるでつい昨日もひもといたかのように、仕事場のテーブルに、他の本と一緒に積まれていた。本棚ではなく。

貴重な名作漫画がずらり。少年少女世界文学全集は、子どもの頃買ってもらったお気に入り

バレエ鑑賞が趣味。年間30 公演ほど観る。パンフレットは必ず買い、あとから読み直してもう一度楽しむ。記事に感化され、再度見に行くことも

伝説のバレエ団「バレエ・リュス」の漫画を連載しているので資料として購入。リアルな記述に魅了され、繰り返し読んでいる

エネルギーをもらう書店 吸い取られる書店

小学生の頃、知り合いのお姉さんにもらって以来、大切に持っている。挿絵が美しく、今見ても飽きない

食生活や医学は自然と気になるようになり、健康道を追求している。右は、民間伝承の知恵で知られるワイル博士の代表作

書店は桜沢さんにとって「ビビビッとくるもの」を探しにいくワンダーランドだった。大人になっても、漫画家になっても毎日通った。だが最近はセレクトショップ以外はほとんど行かないという。

着物が趣味。稲葉賀恵さん初のライフスタイル本は着物について学ぶことが多く、伊兵衛織など貴重なものが見られる贅沢な著

「大型書店って、ときめかないんです。本のエネルギーに吸い取られて元気が無くなりそうで」

溢れているのに欲しい本がない。元気をもらっていたのが、いつしか吸い取られる場所に。この虚無感は書店を愛している人だからこそ。

子どもの頃からの愛読書。保存用と読書用を揃えている。「町子先生は最小限の線で表現していて本当に絵が巧い。尊敬しています」

祖母も読んでいた『サザエさん』から草間彌生装丁の『不思議の国のアリス』まで。今は本棚が、ビビビッのつまったワンダーランドなのかもしれない。

斜めの板で強度を保っている

中学生の長女の作品。飼い猫は3匹

「在庫を置いている」と自称する本棚には作品が満載

桜沢さんへのQ&A

窓が2面ある明るい仕事部屋での桜沢さん。戸建ての仕事場兼自宅は成城学園の住宅地に佇む

Q どんなタイミングで本を買いますか?
A 子どもの頃は書店に毎日通っていましたが、今はほとんど行きません。神楽坂モノガタリやB&Bなどのセレクトショップにたまに寄ると、ジャケ買い&まとめ買いをします。

Q  影響を受けた作家は?
A 長谷川町子先生です。

Q この書棚は?
A 4年前、マルゲリータにオーダーしました。圧迫感のないデザイン、クギを使わず、簡単にバラすことができる点も気に入っています。

Q このほかに書棚は?
A 友人の漫画などを置くアントニオ・テッチリオの棚が一竿、自作の漫画を置く造作の棚が一竿あります。

桜沢エリカさん
漫画家。1963 年、東京都生まれ。19 歳で漫画家デビュー。都会的な恋愛漫画の第一人者として多くのファンを得る。『メイキン・ハッピイ』『天使』『スタアの時代』などヒット作多数。‘99 年に長男、’02年長女を出産。子育ての様子を描いた『今日もお天気』シリーズも好評。女流美容一族を描く『こまどりの詩』を『週刊女性(主婦と生活社)』に連載中。

Source: 日刊住まい