賃貸 VS 持ち家は「住まいを失う可能性」があるかどうかが最大の差

賃貸と持ち家を比較する場合、どうしても「経済的にどっちがお得?」という議論になりがちです。

「経済的にお得かどうか」については、各家庭の家族構成や就業形態、さらには景気動向による不動産相場の変動(値上がりや値下がり)などによって常に変化していきます。

したがって、すべての人に共通してどちらがお得、と言いきることは、じつはできないものなのです。

そこで今回は、経済的にお得かどうかとは別の観点から「賃貸と持ち家の違い」を比較

不動産業界に約30年間携わった筆者の経験から、それぞれの特徴をお伝えします。

住み替えの容易さは断然「賃貸」が勝ち!

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居住用建物の普通型賃貸借契約の期間は通常2年間。しかし一般的には、借主は貸主に対して1か月前に退室の申し入れを行うことにより期間内でも解約・退去が可能という条項がほとんどの契約に盛り込まれています。

そのため、住み替えたいときにいつでも住み替えられるのが賃貸の強みだといえるでしょう。

持ち家の場合、住宅ローンが残っていなければすぐに住み替えが可能ですが、住宅ローンが残っている場合はその自宅を売却したり、ローンの残額を返済するための資金を用意したりする必要があります。

また、転勤などで住宅ローンを残したまま賃貸住宅に住み替えるような場合は、新たな家賃とローンの二重払いが発生します。

加えて、住宅ローンを借りている金融機関に連絡や確認をせず、自宅を賃貸に出すとローン残額の一括返済を求められる場合もあるので注意が必要です。

面積の広さを求めるなら「持ち家」

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公益財団法人不動産流通推進センターが管理・運営する総合不動産情報サイト「不動産ジャパン」に登録されている賃貸マンションと分譲マンションで現在、借主・買主を募集している物件の「広さ」をいくつかの地域別に比較してみました。

まず、賃料・価格・築年数などを問わず、専有面積が60平米以上の物件を検索してみると、横浜市鶴見区では、賃貸マンションが35件なのに対し、分譲マンションの登録は182件に上ります。

同様の条件で、東京都杉並区で検索してみると、賃貸マンションは120件、分譲マンションは192件という結果でした(いずれも2019年6月時点の情報です)。

もちろん、その地域の市場性などによってその割合は若干変化しますが、その他の地域も持ち家の専有面積が広い傾向となっています。

広い居住空間を求めるならやはり持ち家が有利だといえるでしょう。

自由度は「持ち家」が高い。でも注意が必要!

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賃貸と持ち家では利用制限に大きな差があります。

区分所有マンションなどの共同住宅では、管理規約などによってその利用方法が制限されていますが、賃貸の場合はさらに貸主の意向でその他の利用制限が加わることもあります。

ペット

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たとえば、区分所有マンションを賃貸で借りる場合です。マンション全体の管理規約ではペット飼育が可能な場合でも、当該居室の所有者(貸主)が賃貸条件をペット飼育不可とすることは当然自由にできます。

また、区分所有マンション以外で、明確な管理規約がない共同住宅や一戸建ての借家などでも、貸主が独自に利用制限をしている場合が多くみられます。

たとえば、サラリーマンが借家を「居住用として借りている場合」、借主の仕事が将来的にフリーランス(自営業)に変わり、自宅を事務所や店舗として利用したくても、通常の賃貸借契約では貸主の承諾を得ずに利用用途を変更するのは禁止されています。

契約書

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持ち家であれば、住宅を自由に改造したり、事務所や店舗に利用することも自由ですし、住宅ローンが完済されていれば賃貸に出すことも可能です。

ただし、住宅ローン完済前であり住宅に銀行の抵当権などが設定されていると、建物の増築や用途変更、賃貸に出すような場合は抵当権者である銀行の承諾が必要になりますので十分にご注意を!

賃貸は「住まいを失う可能性」がある点が最大の違い

所有権とは、期限がなく「絶対不可侵の権利」といわれるとても強い権利です。

住宅を購入し、土地建物の所有権を得た場合は、ローンの返済が滞ったり固定資産税の納付を怠ったり、道路計画などの買収対象になったりしない限りは、望めば基本的にその住宅に「生涯」住み続けることができます。

それに対して賃貸の場合は、借家を借りるときに「賃借権」が発生します。

引っ越し

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賃借権は賃借人を保護するためのとても強い権利であることは間違いないのですが、所有権と違い、自分に非(ローンの不払いや租税の未納など)がない場合でも「住まいを失う可能性」があることを知っておかなければなりません。

たとえば、貸主(大家さん)がそれまで暮らしていた家から出なければならなくなり、その借家を貸主自身の住まいとして利用せざるを得ないようなときは借地借家法で規定する「正当事由」が認められ、借家を明け渡さなくてはならない場合があります。

また、借家に設定登記されている銀行の抵当権等が実行され、競売によって第三者が借家の新たな所有者になったような場合に、その新所有者から明け渡し請求がなされると、やはり借家を明け渡さなければなりません(明渡猶予期間有)。

今回ご紹介した以外にも、賃貸と持ち家の双方にはさまざまなメリットやデメリットがありますが、賃貸と持ち家のもっとも大きな違いは、賃借権と所有権の違いであることを覚えておきましょう。

※参考

公益財団法人 不動産流通推進センター

Source: 日刊住まい