あなたが押した印鑑の向こうには、「命」があった。象牙取引の「いま」を考える。

動画を見て一瞬不安になった。さっき請求書に押したハンコ。あの印鑑は、何でできていた? 

動画とは、これだ。

環境保全団体 WILDAIDが、日本における象牙販売・取引への問題提起として作成したキャンペーン動画。
「ハンコグラフ」と名付けられた印鑑で作られたアニメーションは、アカデミー賞ノミネートのアニメーション作家・山村浩二さんによるもので、500本の木材で作られた印鑑を使い、2400枚の紙にハンコを押し、1枚1枚撮影されたものだという。
動画を通じて訴えられているのは、最後にメッセージとして出てくる、「私たちの選ぶ印鑑が、象の生死を分ける」というまぎれもない事実だ。

日本は世界最大の象牙販売国で、日本の消費している象牙の8割が印鑑として使われている。象牙を目的に、15分に1頭のアフリカゾウが殺されていて、このまま密猟が続けば、あと10年でアフリカゾウは絶滅すると言われている。

WILDAID JAPAN代表で、NPO「アフリカゾウの涙」代表理事の山脇愛理さんが、ジャーナリストの堀潤さんが司会を務めるネット番組「NewsX~8bitnews」4月22日の放送に出演し、象牙をめぐる世界の動き、そして日本の遅れについて、以下のように説明した。

山脇愛理さん

「ワシントン条約で1989年以降、象牙の国際取引は禁止されていますが、それ以降は各国国内で取引が続けられていました。2016年のワシントン条約締約国会議で象牙の国内取引を世界的に閉鎖することが決議され、当時象牙の消費大国であった中国や香港は2017年で象牙国内取引をやめる計画を発表しました。ところが日本は、なかなか世界と足並みを揃える方向には向かっていません」

山脇さんは、幼少期に父の転勤で南アフリカへ移住。クルーガー国立公園など、保護区で多くの時間を過ごし、南アフリカのヴィッツ大学動物学科で動物行動生態学を学んだ経験を持つ。NPO「アフリカゾウの涙」は、ケニアと日本に拠点を置き、象牙の消費をなくし、野生動物と人と森が共生していくことを目標に活動している。

「象牙が消費され続けるかぎり、生きた象の牙には金銭価値が付いてしまい、密猟のターゲットとして狙われ続けます。地球に残っているアフリカゾウは残り3%になりました。動物たちを保全する側に、そろそろ日本も回ってほしいと思っています」

密猟された象牙は容易に現金収入化され、イスラム過激派テロ組織や国際的な犯罪組織も象牙や犀角(サイの角)を軍資金に使っていることが判明しているという。

印鑑は日本社会には深く根付いていて、ハンコ文化は簡単に変えられるものではないかもしれない。しかし、印材(印鑑の素材)には様々な種類があって、象牙である必要はない。冒頭の動画も、木材の印鑑で作られたものだ。

一人ひとりが、サステナブルな素材を選択することで、状況は変えられる。
「#私は象牙を選ばない」キャンペーンでは、特設サイトを作り、署名も集めている。

【文:高橋有紀/編集:南麻理江】

堀潤さんがMCを担当する月曜の「NewsX」、次回は5月13日夜10時から生放送。番組URLはこちら⇒https://dch.dmkt-sp.jp/title/tv/Y3JpZDovL3BsYWxhLmlwdHZmLmpwL2JjLzBjMWQvNWUwNg%3D%3D

Source: ハフポスト