ノーベル平和賞候補になった、スウェーデンの女子高生グレタ・トゥーンベリ。彼女の英国議会スピーチを全訳しました

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School strike week 36. #climatestrike #fridaysforfuture #schoolstrike4climate

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登校拒否をはじめたあるスウェーデンの女子高生

今、世界を動かしている高校生がいます。彼女の名前はグレタ・トゥーンベリ。スウェーデンの女子高生です。

2015年の夏から登校拒否をし、議会前に座り込む抗議活動を開始。「気候変動のための学校ストライキ (Skolstrejk för Klimatet)」と書かれたプレートを掲げ、一人っきりで座り込みを始めた当時は15歳でした。

2018年の9月に予定されていたスウェーデンの総選挙に向けて気候変動の危機を訴えるために始めたストライキの元には、次第に賛同者が現れ、数百人を超える規模に膨れ上がりました。中にはわざわざ休みをとり参加した教員もいました。

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Några bilder från idag. Tack till alla som kom och satte sig! #klimatstrejk #klimat

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広がるムーブメント

その後、彼女は12月にポーランドで開かれた国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)や、2019年1月のスイス・ダボスでの世界経済フォーラムに招待され、そこでの発言やスピーチがさらに注目を集めることになります。グレタの主張に世界中の若者が賛同し各地でストライキが勃発していきます。

2018年11月のオーストラリアでは15000人、12月にはスイスで4000人、年明けのベルギーでは12750人、ドイツでは25000人、と徐々に勢力を拡大し、オランダ、アイスランド、ノルウェー、ニュージラーンド、デンマーク、フランス、イタリア、イギリス、アメリカ、カナダ、チリへと全世界に抗議活動は広がりました。

最終的には学校のない南極大陸以外、全大陸の2000都市で抗議活動が起きました。この世界中のムーブメントの中、グレタはメッセージを発し続け、その気候変動に対する危機感とその行動力が評価され、ついにはノーベル平和賞の受賞候補となったのです。

イギリス議会でのスピーチを全文和訳しました

これまで何度も各地で彼女はスピーチをしてきたのですが、2019年4月のイギリス議会でのこちらのスピーチが特に素晴らしかったです。以下、動画です。

というわけで全文を訳して掲載します。なお、下訳をしてくれたのはフランス在住の宮寺隆幸くんとハンリ・マーレンさんです。

それでは以下からどうぞ。


私の名前は、グレタ・トゥーンベリ。16歳です。スウェーデンからきました。未来の世代を代表して話します。あなたたちの多くは、ただの子どもだから、私たちの声を聞きたくないでしょう。しかし私たちは、気候変動枠組条約のメッセージを繰り返しているだけなのです。

あなたたちの多くは私たちが学校に行かず、大事な授業を受けないことを心配しているでしょう。しかし、あなたたちが科学に耳を傾け、私たちに「未来」をあたえてくれたらすぐに学校に戻ります。これは本当に求めすぎといえるでしょうか。

2030年に私は26歳になります。私の妹ベアタは23歳になります。多くのあなたたちの孫や子どもと同じです。いい年齢だといわれます。まだこれから先に人生があるからです。しかし私は、この先の人生がそんなにいいものであるのか確信できていません。

私は、大きな夢を抱くことができるこの時代と場所に生まれてよかったと感じています。なりたいもの何にでもなることができ、住みたい場所に住むことができました。私のような人は必要なものすべてを手にいれました。それは、私たちの祖父母には想像もできなかったことです。欲しいものすべてを手に入れることができましたが、今、私たちはすべてを失うかもしれません。

今、未来はもう無いかもれません。

なぜなら一握りの人達が、想像できないくらいのお金を儲けるために、未来が売られたからです。「可能性は無限大」「人生は一度っきり」とあなたたちがいう度に、私たちから未来は盗まれるのです。

あなたたちは嘘をつきました。偽の希望をあたえました。未来はくるのを楽しみにするものだと、あなたたちは私たちに言いました。そして一番悲しいことは、多くの子ども達は、私たちの末路に気づいていないことです。気づいたときにはもう手遅れでしょう。しかし、私たちはまだ運がいいほうです。最も悪影響がある人達は、すでにその影響を受け始めています。しかし、その人達の声は聞かれないのです。

私のマイクのスイッチは入っていますか。私の声は聞こえていますか。

今から10年と252日10時間後の2030年、人の手を離れて後戻りのできないような連鎖反応が発動する状況になります。それはご存知のように、今の文明の終わりを導くかもしれないものです。

それは、時がくるまでにCO2の放出量を少なくとも50%削減するなどの、かつてない永続的な変化を、社会のあらゆる面で起こさない限り実現してしまいます。念のため触れておくと、この計算はまだ生まれていない大規模な発明品を考慮に入れていません。その発明品は、大気中にある天文学的な数量の二酸化炭素をなくさなければならないのです。

さらにこの計算は北極圏の永久凍土の融解による強力なメタンガスの放出などにみられる、まだ見ぬ臨界点とフィードバックループ[1] を考慮していません。

この科学的計算には、大気の汚染による温暖化、パリ協定のいたる所で明言されている公正な見解、つまり「気候正義」[2]を考慮していません。しかし、これらは世界規模で絶対的に取り組む必要があります。

今のは、ただの計算であることを忘れてはなりません。ただの予測です。「引き返すことのできない時」は、遅かれ早かれ2030年前後に訪れるであろうということです。確実なことは誰にもわかりません。しかしながら、この計算は単なる意見や大雑把な予測ではないので、だいたいこの時期に起こると確信できるのです。

これらの予測は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によってすべての国で決議され、科学的な事実によって支持されています。世界中の主な科学を扱う国家機関のほとんどは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の研究と発見を支持しています。

今、言ったことは聞こえましたか。私の英語は大丈夫ですか。

マイクのスイッチは入っていますか。ちょっと気になってきたので…。

この半年間、私はバス・電気自動車・電車で、数100時間にわたってヨーロッパ中を旅しました。人の生き方を変えるような言葉を繰り返し発してきました。しかし、そのことついて話してくれる人はおらず、これまで何も変わりませんでした。事実、大気汚染物質の放出量は上がり続けています。

各地の講演の道中では、滞在している国の気候政策について分析するのに多くの人が手伝いをしてくれました。しかし、それは本当に必要なことではありません。なぜなら、どこでも本質的な問題は同じだからです。その本質的な問題とは、要するに「きれい事」と「約束」があるにもかかわらず、気候と生態系の破壊を阻止し、遅くすることさえできていないということです。

しかしながらイギリスはとても特別です。その歴史は長く、驚くべき「炭素赤字」[3]だけでなく、現在もカーボン・アカウンティング(炭素会計)[4]を積極的に進めています。

グローバル・カーボン・プロジェクト[5]によると1990年からイギリスは、国土のCO2の放出を37%削減できたとされています。それはとても素晴らしいように聞こえます。しかし、その数には航空産業や海運業、貿易に関して放出されるCO2が含まれていません。Tyndall Manchesterによると、もしそれらの数が含まれると、その減少は1990年から約10%減、だいたい1年間に0.4%減にしかなりません。

この削減の主な理由は気候政策の成果ではなく、2001年のEU(欧州連合)の大気についての取り決めです。(EUが)イギリスに老朽化して有害な物質を多く放出する石炭発電所を閉鎖させ、それほど公害に影響しないガス発電所に取り替えさせたのです。粗悪なエネルギー源を、より粗悪ではないものにすることは、もちろん大気汚染物質の放出削減を導きます。

しかしおそらく、最も大きな気候危機についての誤解は、その放出を「減らさなければならない」ということです。なぜなら、これは十分な結果とはほど遠いのです。気温上昇を1.5~2℃以下でとどめたいなら、放出を「止めなければ」なりません。もちろん「放出の削減」は必要です。しかしそれは、過程の始まりにすぎず、数10年もしくはそれ以下の間で放出を「終わらせる」必要があります。「終わり」というのは、完全に0を意味します。そしてすぐにマイナスの数字になることもです。つまりそれは、現在のほとんどの政治を不可能にします。

放出を「止める」かわりに「削減する」という言葉を使うことは、おそらく今までのビジネスを今後も続けるためのもっとも大きな力になっています。化石燃料の新たな開発に対するイギリスが行っている支援には、例えば、シェールガスの水圧破砕法(すいあつはさいほう)産業や、北海の油田とガス田の拡張、空港の拡張が含まれます。そして真新しい炭鉱の計画許可は非常にばかげています。

この止まらない無責任な動きは、人類の1つの大きな失敗として疑うことなく歴史に名を刻むでしょう。

皆、私と学校をストライキをした数百万人の「スクールストライカー」に、今まで成し遂げられたことを自慢してはどうかといってきます。しかし、向き合うべきは排出量曲線(emission curve)です。残念ながら、それはまだ上昇傾向です。この曲線は私たちが見るべき唯一のものなのです。

あらゆる意思決定がどのように作用してこの曲線に影響するのかと問う必要があります。今や成功と富を経済成長のグラフで測るのは終わり、温室効果ガスの放出曲線で計るべきなのです。「これを終わらせるのに十分なお金があるかどうか」お金の有無だけではなくて「これを終わらせるのにカーボンバジェット(炭素予算)[6]の節約は十分かどうか」と、問うべきです。これこそ私たちの新たな基軸となる「通貨」とすべきです。

多くの人は、気候危機に何も解決がないといっています。それは正しいでしょう。なぜなら、いったいどうしたらいいというのでしょう。どうすればいままで人類が直面してきたなかで、最大の危機を「解決」できるでしょうか。どうすれば戦争は「解決」できるでしょうか。どうすれば最初に月に行く方法を「解決」がきるでしょうか。どうすれば新しい発明をする方法が「解決」できますか。

気候危機は、今まで人類が直面したなかで最も簡単でありながら最も難しい問題です。なぜ最も簡単な問題であるかというと、私たちは今すべきことがわかっているからです。つまり、温室効果ガスの放出を止めなければいけないということです。最も難しい問題である理由は、現在の私たちの経済は完全に化石燃料に頼りきりであるが故に、絶え間ない経済成長のために生態系を破壊し続けているからです。

「では、どのように解決するのか。」あなたたちは、私たち(気候のためにストライキしている子ども達)に問います。

私たちはこう答えます。

「確実な方法を知っている人は誰一人としていません。しかし、化石燃料の燃焼をやめて自然を再生し、未だに明らかになっていないことを元の状態に戻す必要があります。」

あなたたちは「そんなの答えではありません。」といいます。

だから私たちはこう答えます。「危機を危機とし認識し始めないといけません。そして、すべての解決を知らなくても行動すべきです。」

「そんなのまだ答えではありません。」とあなたたちはいいます。

そして私たちは、循環経済や自然の再生、「公正な移行」[7]の必要性について話し始めます。すると、たちまちあなたたちは、何のことを話しているかわからなくなります。

これらすべてに必要な解決策は誰にも知られていないからこそ、科学による裏付けのもと、共に結束し、その方法を共に見つけなければいけないと、私たちは主張します。しかし、あなたたちは聞こうとしません。なぜなら危機を解決するためのそれらの答えは、あなたたちの多くがあまり理解していないからです。もしくはそれを理解したくないからでしょう。

あなたたちは科学の声を聞きません。なぜなら今まで続いてきたことを可能にする方法にしか興味がないからです。今だってそうです。そして、これらの答えはもう存在していません。なぜなら、その時に行動しなかったからです。

気候破壊を避けることは、カテドラル・シンキング [8](大聖堂を建設す時に必要となる思考法)をしなければなりません。天井をどう建設していいかわからなくても、土台を最初に築く必要があります。

ときに私たちは、まず先に解決策をみつけなければなりません。何かを実現させると決めた瞬間、私たちは何でもできます。私たちが緊急時のように行動し始めた瞬間から、気候と環境の大災害を避けることができると信じています。人間は順応する生き物であり、今ならまだ修復可能です。しかし、これができるタイミングはそう長く続きません。私たちは今日、始めるべきです。これ以上の言い訳はできません。

あなたたち(大人)がこれまでに作り上げてきた社会の中で、私たち子どもの考えることが政治的に実現可能だと、あなたたちは言うでしょう。しかし、そのために私たちは、子どもの教育と子ども時代を犠牲にしようなどとは思いません。私たちは、あなたたちが一緒にセルフィーを撮り、私たちの行動を褒めてもらうために路上に連れ出されているわけではありません。

私たち子どもは、あなたたちを目覚めさせるためにこれをしているのです。あなたたちが意見の違いを脇に置き、危機に瀕しているときのように行動し始めるために、これをしているのです。私たち子どもは、希望と夢をとり戻すために、これをしているのです。

私のマイクのスイッチが入っていたと願っています。私の声が聞こえたと願っています。

 

この記事は「Tatsumaru Times」に2019年5月4日掲載された「世界を動かすスウェーデンの16歳女子高生グレタのメッセージ|英国議会スピーチを全訳しました 」より転載しました。

Source: ハフポスト