「寄付はCSRではなく、本業」。コモンズ投信がクラウドファンディングを通じて描く未来図とは。

社会起業家を応援するなど、ファンド運用から生じる利益を社会に還元する取り組みに力を入れているコモンズ投信。コモンズという社名は、人が集まる場所を意味する「コモングラウンド」に由来する。世の中に、長期的な目線でお金を循環させることで、「今日よりもよい明日」をつくるという願いを込めている。4月からは朝日新聞社が運営するA-portとコラボして、クラウドファンディングの活用にも乗り出した。

左からコモンズ投信・渋澤健氏、モア・トゥリーズ・水谷伸吉氏

「コモンズ投信(以下コモンズ)は2008年、世界金融危機やリーマンショックの真っ只中に投信会社として設立。その数年前に私自身が親となっていたこともあり、世代を超えて子どもたちにサスティナブルな未来への長期投資を日本全国へ広めたい、という強い思いがあります」

取締役会長の渋澤健氏は設立理念をこう語る。

 

投資が経済的リターンと社会貢献に

コモンズの未来を見据えた事業は、投資で顧客に経済的リターンをもたらすこと、そして同時に、よりよい社会をつくるという社会的なインパクトの両輪が軸となっている。

「我々にとって、寄付はCSRではなく、社会貢献でもなく、本業」という渋澤氏の言葉をそのまま実現しているのが、社会課題の解決にいち早く乗り出したNPO、企業、個人などの社会起業家を応援するプログラム「SEEDCap」(シードキャップ)だ。
毎年開催しているコモンズ社会起業家フォーラムに招いた登壇者から候補者を選び、ファンドの受益者からの推薦を参考にして、選考委員会で応援先を最終決定する。コモンズ30ファンドの公募投信の運用から生じる信託報酬の1%相当を寄付するとともに、広報活動の面などにおいて1年間伴走するプログラムで、これまで9回開催してきた。

「コモンズがいただく信託報酬は、もとを正せばファンド受益者のみなさまのお金。つまり、寄付行為はコモンズですが、間接的に日本全国の大勢の皆さんが寄付にご参加いただいていることになります」(渋澤氏)

コモンズが目利きとなって支援先の信頼性を担保

寄付や支援は、経済的に豊かな人だけのものではない。学生でも、アルバイトをしている人でも、1000円程度の少額をスマートフォンやパソコンから気軽に寄付や支援ができるのが、クラウドファンディングのメリットだ。それは、寄付や支援をした人にとっても、「社会を変える当事者」として参加する機会でもある。

「クラウドファンディングの仕組みは、コモンズ投信の目指す世界にとてもマッチするものです。手軽なテクノロジーを利用することで、もっと多くの人が身近に寄付をして善いお金が循環する社会にしていきたいですね」(渋澤氏)

コモンズ投信のイベントコモンズ投信のイベント

一方で、支援をする側にとっては、「どこに支援をするか」も、ひとつのハードルになりやすい。クラウドファンディングは、その範囲や目的も多種多様。多くのプロジェクトの中から支援先を選ぶのが難しいという人も少なくない。

そこでスタートするのが、コモンズ投信とA-portがコラボしたクラウドファンディングだ。社会起業家支援に精通したコモンズ投信が目利き役となり、プロジェクトをピックアップ。信頼性が担保されることで、誰でもよりスムーズに寄付を行動に移しやすくなる。

さらに渋澤氏は、「駅前などの募金と異なり、クラウドファンディングを通じた寄付の場合は支援する側とされる側がキャッチボールしながら、併走できます。プロジェクトの行方を見守り、共創することで、お互いに当事者意識が生まれます」とも語る。

支援する側とされる側が共創して森を守る

今回のクラウドファンディングで支援を募るのは、コモンズの「SEEDCap」で選ばれた社会起業家のプロジェクトが中心となる。

そのひとつが2017年のSEEDCapに選ばれた一般社団法人モア・トゥリーズ。坂本龍一氏が代表を務める森林保全団体で、「都市と森をつなぐ」をキーワードにさまざまな活動を行っている。

「我々の発信力には限界がありますが、コモンズ投信とコラボすることで大きな広がりをみせています」(水谷氏)

「森を保全する活動に寄付をしてくださったみなさんと一緒に荒れた森林を間伐するツアーや、国産材から作られた木の玩具を使ったワークショップを開催したりもしています。僕たちだけでは社会の限られた部分にしかリーチできなくても、コモンズ投信と一緒にやることで、より多くの人に発信できています」と、モア・トゥリーズ事務局長の水谷伸吉氏。

また、渋澤氏も「寄付をして活動報告を知るだけでなく、間伐作業など自分も体感できる点がユニークです。一歩踏み込んだ新しい寄付の形として、もっと広げていけるといいですね」と期待を寄せる。

子どもを孤立から救いたい

子どもを孤立させないための活動をしているのが認定NPO法人ピーシーズ。2018年の「SEEDCap」で選ばれた団体で、4月5日からクラウドファンディングをスタートした。

「ソーシャル・サポートとのつながりが途切れてしまい、誰かに頼りたいけれど頼れない子どもたちの力になりたい」と、ピーシーズ・斎典道氏

孤立から子どもを救うための居場所づくりに取り組む組織は多い。しかし、より柔軟に支援していくには、子どもたちにより深く直接関わる人との関係性が求められている。

「我々は子どもを孤立させない社会の仕組みづくりを、支え手となる『人』の開拓・育成というアプローチで取組んでいます。場やサービスがあるだけではつながりきれずに孤立していく子どもたちというのが多くいます。しかし、その背景は様々なので、一人ひとりの状況に対して想像力をもって柔軟に関われる人を増やすことで、子どもたちとのアクセスを広げています。」(ピーシーズ事務局長・斎典道氏)

子どもへの支援は社会的関心も高く、コモンズも重視する分野だ。ピーシーズが「SEEDCap」で選ばれたときは、コモンズの受益者である小学生から「子どもをひとりするのはかわいそうだから」という応援のコメントが寄せられたという。「子どもに対するアクションの重要性をこのコメントからひしひしと実感しました」と渋澤氏は振り返る。

寄付に無縁だった人にも身近なものに

新たなチャレンジとしてスタートするコモンズとA-portのクラウドファンディング。「モア・トゥリーズでは国内の植林活動、インドネシアのオラウータンの森を守る活動、木の玩具を保育園に届ける木育などに力を入れています。今回は、高知県四万十川の源流域で水源となる森づくり(植林)のプロジェクトで挑戦したいと思っています。」(水谷氏)

一方、ピーシーズの斎氏は「我々は育成プログラムを拡大する費用を考えています。ピーシーズの活動は拠点のある東京中心になりがちですが、孤立している子どもは全国にいます。朝日新聞やA-portという全国区の媒体で我々の取り組む課題や活動を多くの人に知ってもらい、サポートの輪を広げていきたいと思っています」と語る。

実は、寄付をする人としない人は大きく二分されている。寄付をする人は一人で何団体にも寄付をするのに、しない人は寄付に縁のないままということが少なくない。その理由には、金額だけでなく、寄付というアクションが持つハードルがある。
「寄付に感心の高い特定の人たちだけでなく、垣根を超えて寄付が身近なものになってほしい。そのためにも、リターンのあるクラウドファンディングやふるさと納税のような新しい形態は、大きな意義があると思います」(水谷氏)

クラウドファンディングを通じた新たな試みに「違う団体同士がコラボして取り組むというのも面白そうですね」と渋澤氏は笑顔を見せる。ピーシーズの子ども向けイベントでモア・トゥリーズの木育のワークショップというようなプロジェクトも登場するかもしれない。

どんなクラウドファンディングがスタートするのか今から楽しみだ。
(工藤千秋)
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コモンズ投信が協力しているクラウドファンディングは、A-portの「SDGsの達成に取り組むプロジェクト 未来をつくる取り組みに参加しよう。」のページに掲載されている。詳しくはこちら

Source: ハフポスト