16歳のホームレスになった女性、「社会的養護の経験者が自分の人生を決める」法律を作るために立ち上がった

里親や施設で育った若者たちが、社会的養護の法律を自分たちで変えていく――海外ではそんな取り組みが進んでいます。

英語で、社会的養護を経験した若者は「ユース」と呼ばれます。

「ユース主導で社会的養護を変えていく」という考え方を、31年前にアメリカで先駆けて始めたのが、カリフォルニア・ユース・コネクション(CYC)です。

CYCの設立に携わり、現在エグゼクティブ・ディレクターのアイデ・クーザさんは「ユースがどんな政策を必要としているのかは、ユースに聞くのが一番いいと思います。今ある法律の何が問題なのか、彼らはピンポイントで指摘できます」と話します。

CYCは30年かけて社会的養護のシステムをどう変えてきたのでしょうか。2月15日に開かれた「里親制度国際シンポジウム」でクーザさんが語りました。

アイデ・クーザさん

1通の手紙から始まった

クーザさん自身も、社会的養護の経験者。16歳のときに義父のネグレクトが原因でホームレスになり、その後里親家庭で暮らすようになりました。

31年前にCYCを設立した当時、政治家の中には社会的養護を経験した人がおらず、ユースという言葉がわからない人たちもいました。

社会的養護の法律の中には、当事者の声が反映されておらず、子供たちを危険に晒しかねないと思えるものもあったといいます。

それを変えるためにクーザさんたちがまず最初にやったのは、知事に手紙を書くことでした。

「16歳のメンバー全員で署名をした手紙を、知事に届けました。手紙が本人の元に届くのは簡単ではありませんでしたが、努力が実って何とか会うことができました」

その後CYCは活動を続け、高い評価を受けるようになったとクーザさんは話します。

「もちろん最初からスムーズに進んだわけではありません。ここまでくるのに31年かかりましたが、今では社会的養護の法律を可決させる時に、CYCは非常に大きな役割を担うようになっています」

CYCのプログラム

法律に働きかけるといった大きなレベルのことから、地域の人たちと協力してプログラムを作ることまで、様々な取り組みをしているCYC。

ユースたちは必要な知識やスキルを、CYCが提供するトレーニングやワークショップで身につけることができます。

内容は、法律の知識やリーダーシップ、政治家に働きかける方法を学ぶものから、「ストラテジックシェアリング」という、自分の経験を社会に伝える方法を学ぶものまで、多岐にわたります。

自分の経験を伝えるのは、ユースにとって大切な活動の1つ。しかし話すことで、つらい経験が忘れられなくなったり、話しすぎて自分を傷つけてしまうこともあるといいます。

ストラテジックシェアリングのトレーニングを通して、ユースたちは自分を傷つけず、かつ効果的に話す方法を学べます。

こういったプログラムに欠かせないのが、「サポーティブアダルト」と呼ばれる、ユースを支援する大人たちです。

クーザさんも「私の中のリーダー性や主体性に、私自身が気付くずっと前から大人の支援者が気付き、引き出してくれました」と振り返る。

活動を通して、信頼できる大人や仲間のユースとのつながりも作ることも重要だとクーザさんは言います。

「大人との関係の中でユースが自分のことを信頼し、そして相手のことも信頼して、つながり続けられる関係性を作ることは、ユースにとってとても重要です」

「自分と近い体験をした仲間のユースとつながり作りも同じように大切です。仲間と経験をシェアすることで、自分だけがつらい体験をしたわけではないと感じ、それが羞恥心の軽減にもつながります」

CYCのホームページ

自分の人生を自分で決める

日本でも、CYCのようなユース主導の取り組みが始まっています。

2013年にスタートしたIFCA(インターナショナル・フォスター・ケア・アライアンス)は、社会的養護を経験した日本とアメリカの若者たちが結成したユース組織です。

後半のトークセッションでは、18歳まで社会的養護の元で育った畑山麗衣さんも登壇し、自らの経験を語りました。

畑山さんは、乳児院やグループホーム、施設やファミリーホームなど、色々なケアを転々としてきました。しかし、ホームが変わる時に、児童相談所の担当者から自分の意向を聞かれた実感はないといいます。

畑山さんはIFCAの活動でシアトルに行った時に、自分の発言が認められて物事が運ぶことの大切さを実感したと振り返ります。

「自分で発言したことでできることの実感ってすごく大切です。自分が言ってもよかったんだ、発言してもよかったんだという体験、そしてそれが自分自身の未来に繋がっていくということは日本のユースにとっても必要だと思います」

畑山麗衣さん

クーザさんも、自身の経験からユースが自分自身の決定に関わることの大切さを強調しました。

クーザさんは里親家庭に委託される前、ソーシャルワーカーといくつかの家庭を回って、里親と実際に話をする機会を得ました。話をした上で、自分で委託先を決めたそうです。

「7~8歳以上の若者たちが里親家庭に措置されるときには、自分でその家庭を訪問して、どんなところなのか自分はこれからどんな生活をするのかということを見る機会が与えられるべきだと思います」

「全く馴染みがないところに急に生活が始まるというのと、ある程度やりとりをして歓迎されて生活を始めるというのには、大きな違いがあります」

大事なのは、大切にされていると感じられるシステム

日本の社会的養護は、アメリカなどの諸外国に比べて圧倒的に施設中心ですが、それを里親などの家庭養護に変えようとする動きが進んでいます。

社会的養護を作っていく上で何より大切なのは、子供たちが愛され大切にされていると感じられるシステムを作ることだと、クーザさんは強調します。

「社会的養護の一番中心にいるのは子供たち。一番大切なのは、彼らが大切にされているとしっかり感じられるシステムを作ることだと思います」

「子供たちの中には、自分が大切にされているという感覚を、生みの親と築けなかった子たちもいます。彼らがその感覚を持てるように支援し、彼らの夢を達成する手助けをすることが重要です」

カリフォルニアで31年前に始まった取り組みは、日本のずっと先をいっているように見えます。しかしクーザさんは、1つ1つ積み重ねで変わっていくと話します。

「私の話は、達成し難い、もしくは抽象的に聞こえることがあるかもしれません。だけど私たちの取り組みは、1つの法律を変えるというのではなく、関わる人の人生を変えることにつながっていると思います」

「すごく小さな変化の1つで、変えられることもたくさんあると思います。その小さな変化が、ゆくゆくは人生全体に大きな変化を与えることになるかもしれません」 

Source: ハフポスト