気が弱くても、引っ込み思案でも勝てる。家庭や会社で「交渉」する時の3つのポイント

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交渉というと弁の立つ人が有利だと思っている人が多いのではないだろうか。しかし、それは大きな誤解だ。

 私は常々、若手の弁護士に「“弁護士”のように話してはならない」とアドバイスしている。これはつまり、専門用語を駆使しながら、相手を論破するような話し方をするなということだ。

法律専門家同士のディベートならば、それでいいかもしれない。しかし、クライアント、会社の上司、家庭内といった交渉の場で、そのような話し方をしても問題はこじれるだけ。

できるだけ平易な言葉で、相手の感情にも配慮しながら、ていねいに話さなければ相手の理解を得ることはできない。

 なぜなら交渉は相手との「戦い」であるとともに、「コミュニケーション」でもあるからだ。お互いの主張や意見を伝え合いながら、利害を調整するのが交渉なのだから、「コミュニケーション」というのも当然だろう。

 今回は弁が立たない人でも、交渉を有利に進めるための「コミュニケーション」のコツについて考えていきたい。

 

どんなに理論武装して、強がって見せても、ムダ

 

まずは交渉に臨む姿勢だ。

交渉によって自分の目的を達成しようとする場合、たとえば無理難題を持ち出した上司に自分の要求を伝える、家事負担を夫婦で考える時、人は理論武装をして、隙あらば相手を論破しようと身構えることが多い。しかし、そんな必要はまったくない。私はむしろ、できるだけ「自然体」で臨む方が、交渉においては強いと思っている。

 理由は簡単だ。

駆け引き、誘導、挑発、警告など、さまざまな心理戦が行われる交渉において、どんな人でもその人自身の本質的な性質を明らかにされてしまうものだからだ。どんな理論武装をして強がって見せたところで、あの手この手で揺さぶられれば“仮面”は簡単に外されてしまう。多少のことでは動じない振りをしてみたところで、その演技もばれてしまうのだ。

 身につけていた仮面が外れることは、すなわち相手に弱点を差し出すことだ。そんなリスクをとるくらいなら、「自然体で」で交渉に臨んだ方がいい。気が弱くても、控えめでも、引っ込み思案でも、それが本来の自分であれば、恥じる必要はない。真面目な性格な人は真面目に、社交的な性格の人は冗談を交えながら話すスタイルでいいのだ。

 

「沈黙は金なり」は真実である

 

そして、次のポイントは「口数」である。

アメリカで弁護士の仕事をしていた時、こんなことがあった。

その日は数人の証人尋問が行われたのであるが、その中で陪審員の心を動かす、無類なパワーを発揮したのがとても無口な証人だったのだ。口を開く回数が少ないので、陪審員たちはみな、その証人が話す瞬間に集中する。しかも無口な証人は大事なことしか口にしなかった。

交渉では、口数の多さ、イコール強いということにはならない。口数が少ない人の発言に相手が注意を傾けてくれることもある。そして、その発言が的を射たものであれば、百の言葉を連ねるよりも交渉に大きな影響を及ぼすだろう。

 もちろん、前述の通り社交的で多弁な人は、その自然体なスタイルで交渉に臨んで一向に構わない。ただし、重要な局面を迎えたタイミングで、それまで話していた態度、伝え方、話し方をガラッと変えて、「これから先は真剣な話をする」というスタンスに切り替えれば、相手に違う印象を与え、話の流れを変えることもできるだろう。

 交渉を決するのは「言葉の数」ではない。「言葉の重さ」なのだ。

 

語るに落ちないように、注意が必要

 

そして最後が「聞く姿勢」。

コミュニケーションをするにあたって私たちは、「相手に自分の主張をどう伝えるか」ということに注目するあまり「聞く」ことをおろそかにしてしまいがちになる。しかし、交渉で優位に立つのは、相手からより多くの情報を聞き出す者である。

 「相手の目的は何か?」

「相手が絶対に譲れないものは何か?」

「相手は何を恐れているのか?」

「相手は何に困っているのか?」

などの本音を知ることができれば、適切な策を講じることができる。

 「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」という孫子の言葉がある通り、「彼を知ること」が勝つ秘訣なのだ。だから、交渉のコミュニケーションでは「話す」よりも「聞く」ことを基本とするぐらいがちょうど良い。相手を説得するためにむやみに自分の主張を訴えるよりも、相手の話に耳を傾ける。そして、相手により多くを語らせるのだ。つまり、「聞き上手」を目指した方が交渉に強くなると言ってもいいだろう。

 むしろ、弁舌巧みで饒舌な人は注意した方がいい。「語るに落ちる」という言葉があるが、まさにそれはその通りで、交渉において自分から話をするときには、うっかりと秘密にしておくべきことまで口にしてしまうかもしれない。トランプで言えば、自ら手札を見せているようなもの。これではゲームに勝てるわけがない。相手の手札を察知した者こそが交渉を有利に運べるのだ。

 とかくリーダーシップや雄弁さにフォーカスされやすい社会ではあるが、エースで4番ばかりでは社会は成り立たない。むしろ、待つことも話さないことも自然にできるほうが有利かもしれないと、いままで憂いていた自分の特性を見直してみてはいかがだろうか。これからはあなたの時代かもしれない。

Source: ハフポスト