「同性婚っておかしなことですか?」“同性ふうふ”の僕たちが感じていること

鷹見さんと大野さんは、いろんな面で対照的なカップルだ。

人懐っこくておしゃべりな鷹見さんと、落ち着いて物静かな大野さん。

「私はせっかちでチャキチャキした性格。普段は次これやって〜って私が仕切っているけれど、いざという時は彼がどっしり構えていてくれるので頼ってます」と鷹見さんは話す。

ふたりは2017年12月に公正証書を結ぶ形で“結婚”し(結婚記念日は公正証書で定めた2018年1月)、愛知県で暮らす。

公正証書にしたのは、鷹見さんと大野さんが男性同士だから。

同性カップルには「法的な結婚」の選択肢がない。公正証書を結んで家族になったけれど、法的に結婚したカップルのような社会的な保証や権利がない場合も多く、生活の様々な側面で不安を感じている。

性別に関係なく、誰でも好きな人と法的に結婚できるようにして欲しい。ふたりは2019年2月に他の12組のカップルとともに、日本初となる同性婚訴訟の原告になった

本名で原告になると仕事に支障をきたしかねないため、名前は仮名だ。ただ、ふたりが日々の生活から感じているのは差別や偏見だけではない。むしろ、社会がどんどんLGBTを受け入れるようになっていると感じている。

訴訟を通して、変わりつつある社会のことを知って欲しい。同性婚がおかしなことではないと感じて欲しい。

そんな思いから鷹見さんと大野さんが、ふたりの生活や経験を話してくれた。

ハネムーンで撮った写真

大野さんがカミングアウトしない理由

愛知県の農家で育った大野さん。男の子が好きだと気がついたのは小学校高学年くらいの時だ。ただ、母親以外の家族や友人、同僚には、自分のセクシュアリティを伝えていない。

母親にも、大野さんの身に何かあった時に「自分に連絡が来ないと困るから」と、鷹見さんから頼み込まれてようやく話した。

周りの人に話さないのは、相手を困惑させてしまうかもしれないという心配があるからだ。

「受け入れてくれる人もいると思う。だけど、表面上は受け入れても、知って困る人もいるかもしれない。そう考えると、わざわざ聞かれていないのに言う必要はないのかな、とも思うんです」

ゲイであるのは自然なことだった鷹見さん

対照的に、鷹見さんは「カミングアウトをしたという感覚もない」と言うくらい、身近な人ほぼ全員にオープンにしている。

「物心ついた時から男の子が好きでした。初恋の子ができた時も母に伝えたし、同級生にも○○君カッコいいよねと言っていました。家族も普通に受け入れてくれた」

先輩や後輩にからかわれることはあったけれど、先生たちは「男の子が好きになる男の子もいるんだよ」と話してくれた。

「中学生の時に告白した時には、相手の子は嫌な断り方はせず『僕は男の子と付き合えないけど、好きって言ってくれて嬉しいよ』と言ってくれました。それくらい寛容な同級生が多かったな」

結婚の記念に撮影した、ウェディングフォト

2016年9月。正反対のふたりがひかれあった

鷹見さんと大野さんが出会ったのは2016年9月。

性格もセクシュアリティをめぐる環境も対照的だったふたりが、結婚に対する価値観や将来の夢で、驚くくらい共感しあえたという。

大野さんは、出会ってすぐに「この人とならずっと一緒にいたいなと思った」と振り返る。

鷹見さんの母に「あなたたちはお互いのないところを補い合っているふうふだね」と言われるくらい、仲の良いふたり。今ではお互いになくてはならないパートナーだ。

2017年12月に公正証書を結ぶ形で結婚した

制度上は、家族扱いしてもらえない

しかし、公正証書で結婚して家族になっても、税金や社会保障といった制度の面で、男女のカップルと同等には扱ってもらえない。

例えば、配偶者控除。結婚したカップルであれば、所得の少ない配偶者がいる場合は、配偶者控除を適用して税が優遇される。

会社員の鷹見さんは、できれば仕事をパートタイムに切り替えて家の仕事を中心にした働き方をしたいと思っているが、収入が減っても配偶者控除が受けられない。

カミングアウトしていない大野さんは、生命保険料の受取人を鷹見さんにするのが難しい。

公務員の大野さんは、保険料控除の手続きをする時、職場に書類を提出する。しかし受取人に名字が違う男性の名前を書くと、意図せずにカミングアウトになってしまう恐れがある。本当は鷹見さんにしたい保険の受取人を、今は両親にしている。

また、ふたりはいつか特別養子縁組で親になりたいと思っているが、特別養子縁組ができるのは法的に結婚した男女だけ。海外では、同性カップルで子育てしている人たちもいるし、日本でも親を必要としている子供たちはたくさんいるが、親になる夢は叶わない。

知り合いに、男性カップルの結婚生活ってどんなの?と聞かれることがある。二人の日常を話すと「なんだ、私たちと一緒なんだね」と言われる。

「私たちは他のカップルと何も変わらないのに、男女だと結婚ができて社会的な保護もあります。違和感や不平等さを感じます」と鷹見さんは話す。

ふたりで飼っている猫ちゃん

社会はどんどん変わってきている

その一方で、社会の中では「同性カップルへの理解がどんどん広がっている」と感じている。

マンションの購入予約をした時、ふたりは購入理由を「結婚するから」と答えた。ただ男性同士とは伝えなかったので、何か言われるんじゃないか……と緊張して説明会に行った。しかし、不動産会社の人たちは、ふたりを温かく迎え入れてくれたという。

「どちらがご飯作ることが多いんですか? 鷹見さん? だったら、キッチンは鷹見さんに選んでもらった方がいいんですね、って普通のカップルと同じように対応してくれました」

転居後に役所に書類を提出に行った時も温かく対応してくれた、と鷹見さんは振り返る。

「公正証書を見せたら、『同性婚という対応ができないから、同居人にするか世帯を別で作るかになりますが、どうしましょう?』と親身に相談にのってくれて、びっくりしました」

家電や家具を買いに行ったお店の店員も、新居の床のコーティングをしてくれた業者の人たちも、里親説明会に行った時の担当者も、男性カップルのふたりに差別的な視線を向けることなく、温かく接してくれた。

引っ越してきた時に植えたレモン。ふたりのホームツリーだ。

だからこそ聞きたい。「同性婚はおかしなことでしょうか」

電通が2018年に実施した調査では、78.4%の人たちが、同性婚に賛成と答えた。

そんな社会の変化を肌身で感じているからこそ、ふたりは制度が追いついていないことをもどかしく感じている。2月14日の提訴の時、鷹見さんと大野さんはこう訴えた。

「最近は一部の自治体や民間企業で同性パートナーに対する配慮を進めるところが増えてきました。その一方、国としてはまったくと言っていいほど何も変わっていません」

「少しずつですが社会が変わってきて、(同性婚に)問題がないにもかかわらず、国として何も取り組まないのは、何かと理由をつけて先送りにしているようにしか感じられません」

同性婚ができない今、多くの同性カップルの生活に支障が生じている。

外国籍のパートナーにビザが発行されず、強制退去の不安と隣り合わせて生きている人たち。二人で暮らす家の相続権がなくて困っているカップル。LGBTの理解が広がっていない地方では、セクシュアリティのことを誰にも言えず悩んでいる人たちもいる。

大切な人と一緒に生きていきたいという気持ちは、性別やセクシュアリティには関係ない。

家族ができたことで、喜びは倍に悲しみは二人でわけあえるようになったと話す鷹見さんと大野さん。性別が同じというだけで、結婚できない人たちの苦しみが、少しでも早くなくなって欲しい。だからふたりは問いたい。

「同性婚は、そんなにおかしなことでしょうか?」

Source: ハフポスト