国際ロマンス詐欺、被害総額は5260万。娘が結婚できるなら、とローンを組んだ父も一緒に騙され…。

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千葉県などに住むナイジェリア人やカメルーン人男性が、福岡県に住む50代の女性から現金数百万円をだまし取った疑いで逮捕されたのをきっかけに、大きな注目が集まった「国際ロマンス詐欺」。

軍人などを装い、SNSを通じて「好きだ」「愛している」などの言葉を送り、相手をその気にさせて現金などを騙し取るという悪質な手口が横行しています。

家族問題の心理カウンセラーとしてさまざまな方たちの相談を受ける中で、この国際ロマンスの被害にあったという声を聞くようになったのは2年ほど前のこと。これは看過できない、と一念発起し3年前から、国際ロマンス詐欺の注意喚起と被害者支援を行う活動をしています。

今回は私のもとに駆け込んできた被害者の実話を紹介します。

 

【高橋由美さん・57歳=仮名=、未婚の場合】 

 

「登録だけして、利用していなかった大手の出会い系サイトに、アメリカ人から日本語で友達申請がきました。英語が話せるので外国人とのお付き合いに興味もあって友達申請を承諾しました」

彼の名前はアレックス。

シリアにいる米国軍人で、15歳のお子さんを育てるシングルファーザーでした。何度かやり取りした後、LINEのIDを交換。自分の身分を証明するためにとパスポートの画像と写真が何枚か送られてきました。それに応えて高橋さんも自分の写真を送ったそうです。

「写真を受け取った彼は、『君の笑顔が好きだ』、『これは運命的な出会いだと思う』と言いました。会ったこともないのに、何を勝手に盛り上がっているのと戸惑うばかり。でも愛していると言われ続けて悪い気がする人はいないでしょう?」

彼からの熱烈な「I love you」になかなか答えられなかった高橋さんですが、やがて自分からも「I love you」を初めて伝えるほど親密になっていきました。

「私が初めてI love youといったとたん、軍の報奨金としてもらった8粒のダイヤモンドを送ると言わて。さらには軍を退役したら日本に来て私と暮らしたい。退役申請の書類も一緒に送るから、婚約者としてサインをしてアメリカの国防省に送ってほしいと言い出したんです」

そして、事態は急展開を見せました。

送られてくるダイヤモンドの配送を巡ってさまざまなトラブルが発生。

まずは配送業者から、発送途中の中国でダイヤモンドが紛争で手に入れたものではないことの証明を求められていると連絡がありました。

そのためにはAmerican Gem Societyが発行するKimberley Process証明書が必要だというのです。そして証明書作成の費用として、なんと2700万円の請求が!

「これはおかしいと感じた私は、トラブルに巻き込まれたくないという思いから彼のLINEをブロックしました。でもすぐに彼からメールがきて…」

そこには、

・高橋さんにお金を立て替えてもらいたいこと

・ダイヤモンドと一緒に送った書類を受け取ってもらわないと、退役申請が出せないこと

・ひいては日本で高橋さんと一緒に暮らすことができない

と書かれていました。

アレックスを好きになっていた高橋さんの心は揺れます。結局、配送会社に2700万円を送金してしまったのでした。

ダイヤモンドが紛争で得たものではないことを示す証明書には受取人のサインが必要だというので、高橋さんは宅配業者に自宅住所、電話番号を連絡。数日後DHL(国際郵便)で実際に証明書が届いたそうです。ここがこの犯罪の巧妙なところ。実際に国際郵便で証明書が届いたため、高橋さんの心から「おかしい」と思った気持ちは消え去っていったのでした。

トラブルは続きます。

またもや配送業者から、「証明書を中国当局に提示したところ、ダイヤモンド8粒に相応の税金を払うよう要求された」との連絡を受けた高橋さん。

「その金額は5700万円。そんな大金払えるわけがありません。すると配送業者が3700万円立て替えるからと言い出して。やむなく父に頼んで実家を担保に不動産担保ローンを組んでもらい、2000万円を都合つけて、送金しました」

続けざまに起きるトラブルに、再び不信感が募りました。でもインターネット上にはきちんと配送業者のホームページはきちんとあることを確認したし、配送担当者とは電話でも話をしていて、とても丁寧な対応受けているのも事実。

また、ここまで大金を送金してしまっていたため、ダイヤモンドを受け取らないとその分を取り戻せないという焦りも出てきます。

「アレックスへの愛情なんてどうでもよくて、ダイヤモンドを何とか手に入れないといけないという一心でした」と高橋さんは振り返ります。

その後も、配送過程で配送業者がダイヤモンド取り扱い業者であることを示す書面を発行してもらう費用として670万円、追加の税金として税金の支払いが発生するとして2200万円(うち800万円は配送業者が立て替えてくれた)…と要求は続きました。

もちろん、高橋さんはアレックスに何度も資金援助を依頼しました。でも、「軍隊の口座には自由に手を付けられない、借り入れを頼める知人もいない、荷物が届いて無事退役出来たら必ず返す、ダイヤモンドが届いたら売ってくれてもいい」というばかり。

そしていよいよ、荷物が日本のアメリカ大使館まで大使館に届き、あと少し…というところで、自宅まで配送する保険料として470万円請求されました。

追加の税金を送金したとき配送業者が「もうこれで、お金が必要になるのは最後だ」と言ったにもかかわらず、さらなる請求があったことを怪しんだのは彼女の父親でした。

父親のアドバイスで「アメリカ、軍人、荷物」とインターネットを調べてみたところ、国際ロマンス詐欺撲滅を訴えかけるインターネットサイトを発見。これまでの一連の出来事が、国際ロマンス詐欺であることに気づいたのです。

アレックスと知り合って8カ月間。被害金額は5260万円にもなりました。

「手口が本当に巧みなんです。なんとかして荷物を受け取らないと、これまで支払った分を取り戻せないとどんどん追い込まれ、冷静な判断能力をなくして詐欺だと気付くことができませんでした。今思えば、確かにおかしい話だなって感じるんです。宅配業者がお金を立て替えてくれたりするわけはないですよね?」

「娘が結婚できるなら…」と父親が家を担保にして組んだローンは、現在も返済中だという。

Source: ハフポスト