トランスジェンダーの大学院生、畑島楓さんがミス・インターナショナルクイーンに挑むわけ

男性として生まれたが、その後女性としての人生を歩むトランスジェンダーたちが自らの美を競うコンテスト「ミス・インターナショナルクイーン」の日本予選が1月17日、東京で開かれる。

10年前、タレントのはるな愛さんが世界一になったことで話題になったこの大会に、1人の大学院生が挑む。彼女が出場を決めた理由とは――。

畑島楓さん

東京・新宿にある小さな地下スタジオ。鏡張りの室内で、畑島楓さん(25)=東京在住=が何度もウォーキングの練習をしていた。慣れないハイヒールを履いた足の運びがぎこちない。

ミス・インターナショナルクイーンの本番まで1週間と迫る中、本番の動きを想定した最後の追い込みに入っていた。

書類審査用の撮影に臨む畑島さん

コンテストのパフォーマンスの練習をする畑島楓さん=東京

畑島さんは慶応大学の大学院生。建築について研究しており、この春からは大手設計会社で働くことも決まっている。女性として生きる決心をしたのは1年ちょっと前のことだ。

福岡県北九州市に住んでいた小学校の低学年のころは、一つ年上の姉やその友だちと遊ぶことが多かった。リボンやビーズを集めたり、女の子たちと交換日記をしたり。「『かわいい』『きれい』という価値観を中心に生きているようでうらやましかった」という。

小学3年のころに福岡市に引っ越し、そこで地元のラグビーチームに入った。

運動が苦手だったため、最初はマネージャーをやっていた。だが、俊足を買われて途中から選手として出場するようになった。

それでも男子とつるむことには違和感があった。孤立を深める一方で、絵を描くことに熱中し、インテリアやフィンランドのアパレルブランド「マリメッコ」のテキスタイル(布地)のデザインに興味を持った。

はるな愛さんに自分重ねる

中学のころ、テレビ番組を通じてはるなさんの存在を知った。はるなさんは、体は男性だが自らを女性と考えるMtF(Male to Female)のトランスジェンダーだった。

「完全に自分じゃん」。自分の性別について感じていたもやもやが晴れた気がした。

大学、大学院へと進むにつれ、「女性になりたい」という思いが強くなっていった。だが、周りの反応が気がかりだった。

一方で、就職した後に女性になるほうが難しいと思った。職場だけでなく取引先もからむからだ。「下手をしたら一生タイミングを逃してしまうかも」。不安がよぎった。

悩み抜いた末、在学中に女性になることを決意した。2017年10月、まず化粧から始めた。

女性用の服を店頭で買う勇気はなかったので、オンラインストアで購入した。

最初は外出することが恐ろしかった。夜、コンビニエンスストアに行くのも心配で、男性か女性かわからない服を着た。

背中を押してくれたのが、同じMtFでタレントの西原さつきさんだった。西原さんが開いたMtF向けの化粧講座に参加し、上手な化粧の仕方を教わった。

別のトランスジェンダーの人たちとも知り合いになり、同じ境遇の人達がいることに勇気づけられた。

極めつけは、化粧をしたまま「ハプニング」(畑島さん)で屋外に出てしまったことだ。最初は慌てたが、それが度胸につながった。

畑島さん(左)にコンテストのアドバイスをする西原さつきさん=東京

その約1カ月後。女性の格好で大学院へ行った。捨て身の覚悟だったが、研究室の仲間たちからは「いいじゃん」と言われた。好意的な反応に拍子抜けした。

次第に自信を深めた畑島さんは「周囲から女性として認められている証拠が欲しい」と思うようになった。そこで挑戦したのが、モデルの仕事や別のミスコンテストだ。

コンテストでは書類は通過した。修士論文の執筆のため途中で断念したが、それでも「トランスジェンダーに門戸が開かれているような気がして満足した」という。

「普通」のロールモデル見せたい

今回、再びコンテストに挑戦するのは、ほかのトランスジェンダーに生き方の「ロールモデル」を見せたかったからだという。

「トランスジェンダーというと、タレントなど特殊な人たちばかりが目立っていますよね。ミス・インターナショナルクイーンの出場者もモデルやタレントのような方ばかりです。でも、本当は私のように、一般の人でトランスジェンダーの人がたくさんいると思うんです。そういう人たちがこの社会でどうやって生きていけるのか。そのヒントになればと思っています」

ミス・インターナショナルクイーンには、あこがれのはるなさん、西原さんも出場した経験がある。はるなさんは2009年の世界大会で優勝、西原さんも2013年に日本代表になっている。

2009年のミス・インターナショナルクイーンの世界大会で優勝したはるな愛さん=タイ

畑島さんは言う。

「はるなさんもさつきさんも、その時代その時代のトランスジェンダーのロールモデルを示したと思うんです。はるなさんはMtFがまだニューハーフと呼ばれ、近寄りがたく思われていた時代に、明るいイメージを広めました。さつきさんはMtFは女の子なんだよ、という認識を広めました。女性がやるメイク、仕草、服選びなどをして、誰でも女の子になれるという勇気を与えてくれました。私の場合、『普通』のトランスジェンダーとしての生き方が見せられればと思います」

日本予選を勝ち抜けば、3月のタイである世界大会に出場する。

畑島楓さん


Source: ハフポスト