羽毛ふとんは軽さが値段を左右する?キャリア25年のプロに聞きました

前回は、羽毛ふとんの品質は、快適に眠れるように設計されているかどうかがポイントだとお話ししました。

産出国でも羽毛の色でもなく、断熱性能が寝室の室温に適応するように設計されていることが、大切だとご説明しました。

それでは、値段はどうでしょうか?

羽毛ふとんの値段があまりにもまちまちであること、買う側は困惑してしまいます。1万円で買えるものもあれば、数10万円という値段のものもあります。

価格の差のほんとうの意味は?

羽毛ふとん

原料羽毛自体は、あくまで天然の産物ですから、時節により、その原価は変動します。

何かの事情で、少ししか採れないときや、需要が供給を上回ると、値段は上がります。

この原価変動をある程度吸収しながら、原料から一枚のふとんに仕上げるまでのさまざまなプロセスや加工で、最終的な値段が決まってきます。

また20年前の羽毛ふとんの品質と価格との関係は、現在と同じとはいえないところがあります。

羽毛ふとんのみならず、物の値段というものは、もともと、それなりの理屈があって決まるべきものです。

とんでもない高価なお祭り的な値段がついたり、誰かが泣いているに違いない、途方もなく安い値段が付けられたりすることは、羽毛ふとんだけではなく、言い換えれば、生活産業文化の正常な質の発達を妨げる結果になりかねません。

特に、ただ安さだけを強調された羽毛ふとんを見ると、自然界から受ける恩恵を原料にしている以上、それに対して、敬意と尊重の気持ちを、価格にも少なからず反映すべきだと思わずにはいられません。

 

基本的により軽いものほど高くなる

話を価格の意味に戻します。

つまり、ダウン率が高い、ダウン(羽毛)がたくさん使われていると、基本的におふとんは軽くなり、値段が上がります。

逆に、ダウン率が低い、つまり、スモールフェザーの割合が多い場合、値段は下がります。

そこでポイントとなるのは、ダウン率が高いから良いふとんで、ダウン率が低いと良くないふとんとは一概に言えないことです。

あくまで、そのおふとんの性能の設計目的が問題です。

羽毛

枕に使用されるスモールフェザー、おふとん用はさらに小さく、羽軸も小さく、カールしてやわらかいものが選ばれます

 

ダウン率が高いと保温性は上がり、軽くなる

その理由は、スモールフェザーが羽毛の性能の一つである吸湿放散性を担うからです。

スモールフェザーの方が、ダウンより重いので、おふとんはその分重くなります。

例えば1kg充填のおふとんで、ダウン率が90%とすると、スモールフェザーだけの重さは100gとなります。

ダウン率が85%のおふとんでは150gです。ただし、私たちが感じる重さは、側生地との合計重量としての重さです。

スモールフェザーの吸湿放散性を利用して、ダウンとスモールフェザーの比率を重量比で50%ずつに設計した羽毛ふとんもあります。

重たくはなりますが、代謝能力の高い若い人には、汗をたくさん吸ってくれるため、逆に快適な羽毛ふとんになりえます。

あくまで設計内容と使う人がマッチすることで、「その人にとって、良いふとん」といえるのです。

ハロッズの羽毛ふとんのダウン率100%とtog-9(断熱性能指数9)の表示

ロンドンのハロッズの羽毛ふとんはケースが黒、羽毛ふとんも白でシックで高級感のあるイメージ。ハロッズの羽毛ふとんのダウン率100%とtog-9(断熱性能指数9)の表示

ロンドンの老舗デパート「ハロッズ」では、ダウン率100%の羽毛ふとんが売られていました。

実際、持ってみると、まさに「夢のようにかる〜い」という印象でした。日本では、ダウン率は概ね85%から95%となっています。

スモールフェザーの性能を羽毛ふとんの性能の設計に組み込んでいるからといえます。

 

重量には側生地が大きく影響する

また、羽毛ふとん自体の重量にはおふとんの側生地が大きく影響します。

側生地の重量は通常表示されませんが、軽い生地が使われているほど、基本的には値段は上がります。

また単に生地が軽いことと、ドレープ性(体にフィットする性能)はまた別の設計項目となります。

軽くてドレープ性(フィット性)の高い側生地が使用されているおふとんほど、値段が上がります。

ただ、厳密に言うと、高密度でしなやかな生地が常にいちばん軽いかというとそうでもない場合があります。

あくまで、軽さとドレープ性という二つの性能がそれぞれに独立して設計されることになります。

オーガニックコットンを使用したカバーリングもあります。それはまた異なる考え方です

オーガニックコットンを使用したカバーリングもあります。それはまた異なる考え方です

より軽い羽毛ふとんを毎日使うことは、重たいおふとんを使うよりも、身体への負担が少ないとされています。

眠っている間に身体が圧迫されると、眠っても疲れがとれにくかったり、また、妙に身体の一部が凝ったりします。

また、人は平均一晩に50回以上の寝返りを打つとされています。

寝返りが打てるということは、身体に束縛がなく、自由な姿勢を保てるという健康的な状態ともいえます。

同時に、寝返りをしても、おふとんと身体の間に大きな隙間ができないような、ドレープ性が必要です。

その意味でも、羽毛ふとんの軽さとドレープ性は重要になってきます。

羽毛ふとんの側生地は複雑な縫製のため、あらかじめ、ミシン目を入れる箇所に織り目を付けておきます

羽毛ふとんの側生地は複雑な縫製のため、あらかじめ、ミシン目を入れる箇所に織り目を付けておきます

 

羽毛ふとんの本質は「軽くて、暖かい」こと

いずれにしても、羽毛ふとんの本質は「軽くて、暖かい」ことですから、そのことを追求して設計されている羽毛ふとんは、それに見合った価格となっている、あるいはなるべきということが、値段の理由となります。

なので、単純に安いから悪い、高いから良いということではなく、あくまで使う側が必要とする性能が設計されているかどうかが重要です。

同じ充填量でも、側生地の設計で値段が変わることを、知っておくことは大切だと思います。

掛けふとんカバーは、羽毛ふとんの大切なパートナー。適切な素材を選びます

掛けふとんカバーは、羽毛ふとんの大切なパートナー。適切な素材を選びます

初回にお話しした断熱性能の設計で、基本的には寒いお部屋向きの羽毛ふとんは羽毛の充填量が多く、ダウン率も高くなり、暖かいお部屋向きの羽毛ふとんは、羽毛の充填量が少なく、ダウン率も小さくなります。

言い換えれば、真冬向きの羽毛ふとん、春秋向きの羽毛ふとんを、充填量やダウン率の違いで設計できるということです。

値段とおふとんの軽さの相関関係については、だいたい理解していただいたと思います。

 

掛けふとんカバーについて

次に掛けふとんカバーについてです。

掛けふとんカバーは実際に使用する際の、羽毛ふとんの総重量に影響します。

羽毛ふとんは頻繁に丸洗いできるものではありませんから、掛けふとんカバーをかけます。

掛けふとんカバーを含むベッドリネンのコーディネーションは、どちらかといえばインテリアの世界で、このコーディネーションを季節や部屋のイメージに合わせて楽しむことが、ライフスタイルとなります。

また、綿や麻、フランネルなど、季節によってベッドリネンの素材を変えながら、より快適な睡眠を得ることも可能です。

掛けシーツと敷きシーツ(ベッドの場合はフィッティドまたはボックスシーツで、4つのコーナーにゴムが通してあるタイプ)の間で眠ると、掛けふとんカバーを頻繁に洗う必要がありません。

ピローケースと合わせて、自分の好みのコーディネーションを楽しめるだけではなく、何よりも、暑すぎたり、寒すぎたりの調整がアッパーシーツで可能になります。

また、汗や汚れをまずアッパーシーツが引き受けてくれます。

暑すぎる場合、羽毛ふとんを少しずらして、シーツだけでしばらく眠ることもできます。

シーツは一枚の布ですから、どれだけ羽毛ふとんのドレープ性が高くても、一枚の布の身体へのフィット性には追いつけません。

羽毛の充填作業。羽毛自体たくさんの水分を吸湿放散します

羽毛の充填作業。羽毛自体たくさんの水分を吸湿放散します

ただし、日本ではほとんど掛けシーツは使われていないと聞いています。

家庭に大型のドラム式乾燥機があるうちは少ないはずなのに、重たくて乾きにく、比較的値段もはる掛けふとんカバーだけを使うというのは、どうも、不思議な気がするので、記事を読んでいただいた方で、ご意見があれば教えていただければと思います。

昭和の時代を知っている人は、おふとんといえば重いわたぶとんで、カバーは糊の効いた綿の白で、色柄が見えるように、中央に窓が開いていて、そこにネットがかかっていたり、レースで縁取りされていました。

その名残りで、日本の羽毛ふとんも、今に至るまで、側生地に暖色系と寒色系のペアの色柄を付けないと売れないといわれていますが(?)、カバーリングのデザイン性が高まってきている時代ですから、羽毛ふとんの側生地は、透ける心配のない白で良いと思います。

日本製の掛けふとんカバーは羽毛ふとん本体と結ぶための工夫がされているのが特徴です

日本製の掛けふとんカバーは羽毛ふとん本体と結ぶための工夫がされているのが特徴です

 

掛けふとんカバーはできるだけ軽くて薄いものを

話を戻すと、掛けふとんカバーにつては、できるだけ軽くて薄いものをお勧めします。

できるだけ、羽毛ふとんの軽暖性能(軽くて暖かい性能)とドレープ性が生かされるカバーリングを選びます。

側生地も含めて、軽く設計されていても、重たくてドレープ性に欠ける掛けふとんカバーを掛けてしまっては、その性能が活かされません。

羽毛だけで保温性は十分に設計されていますから、掛けふとんカバーは、何より軽くてドレープ性が高く、吸湿放散性があり、何より肌さわりの良いものが理想といえます。

また、お洗濯の際、乾きやすいことも重要ですね。

毛ふとんの品質表示表の縫い付け。これはだんだん薄れて読めなくなるので、買った時に写真撮りをおすすめします

毛ふとんの品質表示表の縫い付け。これはだんだん薄れて読めなくなるので、買った時に写真撮りをオススメします

羽毛ふとんの軽さとドレープ性などを設計し、そのランキングを決め、それぞれのランクに値する価格を付けているのが、前回ご紹介した、「まちの、いえ」の定番羽毛ふとんです。

ここでの価格が、高いとか安いとかいうことではなく、価格の付け方に妥当な理屈を踏まえているという点で、ご紹介します。

ランキングを快適指数という表現で設定しています。快適さというのは、多くの設計項目のバランスで決められていきます。

羽毛ふとんの検査機関による検査結果や工場の設備、加工の種類やキルト縫製の方法など、多くの項目をベースに、その総合的判定が快適指数ランキングということになります。

羽毛の性能を公平に、なおかつ合理性をもって評価していると言えます。

まちまちな、理由のわからない値段に振り回されることなく、自分の睡眠条件に合った一枚の羽毛ふとんを選ぶ参考に、少しでもなればと思います。

(特注羽毛ふとんの場合の価格はここでご説明した範囲には含まれません。個人仕様でカスタマイズする場合には、設計内容が異なるからです)

次回は、プロによる羽毛ふとんのメンテナンスの方法、いわゆる丸洗い、打ち直し、仕立て直しについて書きたいと思います。

「大切な一枚の羽毛ふとんを80年を超えて使用可能とする方法」についてお伝えします。

 

文章と文責/写真 容子・ルイス

※ 「まちの、いえ」協同組合本部 電話/078・381・5160 メール/ oka@machino-ie.jp

上記へお問い合わせいただくと、お住まいから最寄りのお店のインフォメーションを得ることができます。また、羽毛ふとんについての質問にも答えていただけます。

Source: 日刊住まい