コンテンツと広告は共存し、相乗効果を生む。信頼されるブランドを作るために必要な #嫌われないコミュニケーション について徹底討論。

HUFFPOST

ハフポスト日本版とpopIn株式会社は、「嫌われない広告」「嫌われないメディア」に続く第3弾のイベント「いま必要なのは #嫌われないコミュニケーション だ。みんなで考える、これからのデジタルマーケティングとメディアの世界」を11月22日、東京・六本木で開催した。

本イベントには、メディアや広告主、代理店などからデジタル分野に関わる約150名が参加。ブランドセーフティーを軸に、これからのデジタルマーケティングについて議論した。

読了率とブランドリフトの関係性

第1部は、popIn株式会社の西舘亜希子氏と、ハフポスト日本版の川口あいが登壇。マインドセットとして過去2回のイベントについての振り返った上で、「読了率」とブランドリフトの関連性などについて言及した。

西舘: popInが提供するレコメンドエンジンの特徴として、「内部回遊の強さ」「収益性」の他に、2015年に特許を取得した「読了率」という指標があります。滞在時間は、ページを表示したまま放置しておいても時間が経過しますが、読了率の場合は、本文中の文字数に加え、本文表示率と画面をスクロールするスピードを分析して割り出します。

川口:アドフラウドなどが問題視される中、われわれメディアの人間も「1PVの価値」についてきちんと考えていかなければなりません。そんななかで、読了率という指標は、ブランドコンテンツ(タイアップ記事)にも非常に有用なんですよね。

popIn株式会社の西舘亜希子氏。popInはJARO(広告審査機構)に加入したり、勉強会を実施したりと、広告の質を改善する取り組みにも力を入れている。

西舘:はい、読了率は「熟読層・閲覧層・流し見層」の3つに分けられ、それぞれの層におけるエンゲージメントや態度変容を図ることができます。

ブランドコンテンツにおける読了率とブランド認知についての調査を実施したところ、一般の人に比べて、記事をしっかりと読み込んだ熟読層のほうが、ブランド認知度が高かったという結果が出ました。また、NPSという「自分の近しい人にこのブランドコンテンツを薦めたいか」という指標と、読了率の関係性を調べたところ、こちらも一般層に比べて熟読層の方が「人に薦めたくなる」という結果が出ました。

よって、読了率と「ブランドリフトのポジティブさ」および「ブランド推奨意向の高さ」には、当たり前かもしれませんが、相関関係があるということが立証できたと思います。

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タイアップ広告へ流入を促すブースト広告においても、CPC(コスト・パー・クリック)を読了率で割りもどして算出する「読了単価」で見ることを推奨しています。

プランニングの際に、通常の流れのままブースト広告予算をフェイスブックやツイッターなどの各プラットフォームに投下しても、エンゲージメントの低い読者が多い場に高いCPCを使うことになってしまい、非効率なことが起こってしまいます。

それぞれの広告キャンペーンによって相性のいいプラットフォームも変わるので、単価ありきだけではなく、読了単価を軸に、きちんと記事とエンゲージメントを深めてくれる場所に適切に予算を割り振ることが必要になってくると思います。

ハフポスト日本版パートナースタジオ チーフ・クリエイティブ・ディレクター 川口あい

川口:読了率でいうと、ハフポストもFacebookブーストを実施しているのですが、ハフポストのアカウントによるオーガニック投稿から流入した読者と、ブースト広告から流入した読者とで、記事の読了率がほぼ変わらないという結果が出ました。

FacebookやTwitterなどのプラットフォームとメディアの関係性については多く議論がなされていますが、プラットフォームの中でメディアの役割を顕在化させるための指標としても、読了率や読了単価という指標はとても重要だと思います。

コンテンツメディア価値研究会の調査結果

また、読了率の高い記事に表示されている広告は、読了率の低い記事に比べて「興味度のレベルが15%上がった」というコンテンツメディア価値研究会(大手新聞社・出版社等で構成)の調査結果も出ています。記事の質によって広告への印象までも変わるというのは、ウェブに関わる人間ならば注視すべきですし、良質な広告体験へのヒントにもなります。

私たちは、広告も含めた記事全体の文脈、コンテキストを考えていかねばならず、そのためにもまずは各ステークホルダーが密にコミュニケーションをとることが必要です。

西舘:テクノロジーの力によって何でもできる時代になってきているので、嫌われないことは当たり前。これからは、いかに好かれるコミュニケーションをとるべきか、本イベントでは企業・代理店・メディアの立場それぞれから考えていきたいと思います。

平成10年間で、国内の「情報量」は530倍に

第二部ではサッポロビール株式会社より福吉敬氏、株式会社大広より小野寺氏が登壇。広告主、代理店、メディアのマーケターに必要なスキルについて語った。

株式会社大広 東京アクティベーションデザインビジネスユニット マーケティング局 メディアプロデュースグループ 小野寺 信行氏

福吉:「嫌われない広告」や「嫌われないコミュニケーション」というのは、情報に追われる現代ならではのテーマですね。

平成8年頃はまだ、情報はテレビや新聞などのマス発信に限られていましたが、平成13年ごろから情報流通が活発になり、平成18年には530倍の量に。街中や電車内などにも、広告が溢れかえっています。生活者が情報に疲れ始めたのが、こうしたテーマが話題となる大きな原因になったのではないかと。

小野寺:情報量が増えると同時にデジタル広告も成長してきました。2017年には、日本の広告費全体で約6兆4000億円のうち、デジタル広告費は約1兆2000億と、全体の約23.6%を占める割合に。また、デジタル広告費のうち77%、約4分の3は、アドネットワークなどの運用型広告の費用になっています。

企業だけでなく、ブログやSNSなどで発信する個人も情報サプライヤーとなる時代。プログラマティック広告の進展によって出面が有象無象に生まれ、「スマホ広告 うざい」で検索すると、多くの苦言が並びます。アドブロックアプリのインストール率も伸びています。

出典「平成18年度情報流通センサス」(総務省)

そんななかで、広告主、代理店、メディア、それぞれのマーケターがデジタルプランニングをする際に求められることは何か。

まず、代理店の立場としては、データのインサイトに向き合うためのスキルが必要です。「1PVの価値」という話がありましたが、代理店としても「1インプレッション」の価値を考え、ユーザーとのタッチポイントを設計する。そのためには、テクノロジーの動向をキャッチアップすることが求められます。その上で、広告取引の商流も含めて調整し、広告主やメディア、その先にいるユーザーに、適切かつ透明性を持って届けなければなりません。

サッポロビール株式会社 シニアメディアプランニングマネージャー 福吉 敬氏

福吉:企業クライアント側のマーケターに求められるのは、まず、オリエンをするときに「今回のコミュニケーションのゴールはどこにあるか」を明確にし、それを明文化して社内コンセンサスをとること。そして、実ユーザーを知った上で、戦略的ターゲットを定めたら、その人たちとコミュニケーションをとるためにはどのメディアが適しているかを、特性ごとに見分けて、理解すること。代理店にお願いするばかりでなく、判断基準を自分たちの中で持つこと。お金がかかっても良質なメディアに出すべきとなれば、投資が必要であると社内プレゼンをして突破することも必要です。

あと、一番大事なのは、好奇心を持ち続けること。メディアをはじめ、デジタルの世界はどんどん変化していきます。自分がメッセージを届けたいお客様を理解し、自分の手でお客様が好むメディアを選定し、自分が決めたゴールに向かう。すべて好奇心を持って推し進めていけば、素晴らしいマーケターになれるのではないでしょうか。

広告主として、代理店・メディアに求めることは…?

福吉:そして代理店には「クライアントの意思を理解し、咀嚼する、よきパートナー」であることを求めます。効率的じゃなくても、トータルで見てブランドにとって最良のプランニングを、一緒に考えたい。それはメディアにも求めることです。一人一人だと思いつかなかったようなものが、文殊の知恵で出てくるかもしれない。

メディアにはさらに、自分たちの特質、得意なところがどこかを私たちに教えて欲しい。どういう目的があって、どういう発信をしているか、その上でお互いのブランド特性を融合させた企画案を出して欲しいですね。

小野寺:そして、ユーザーとコミュニケーションを図るには、受け手の文脈に沿ったコンテンツを創出し、そこから正しくユーザーをつれてくる入り口を作ることも大切です。レコメンド広告サービスにも同じことが求められますが、消費者、生活者にとって良質な広告体験に繫がる動線を作ることが重要です。

福吉:私たちはユーザーに寄り添ったコミュニケーションを図りたい。そのためにはコンテンツシフトが重要ですし、広告主側もきちんとコンテンツを評価する姿勢が大事なのだと強く感じています。

作り手の”思い”から始まったコンテンツ・マーケティング

第三部ではpopIn株式会社より程涛氏、株式会社講談社より松村吏司氏が登壇。popInが広告主として現代ビジネスに出稿した際の話が展開された。

程:popInでは、これまでのテクノロジーベンダー事業とは別枠で、popIn AladdinというIoTシーリングライトの開発・販売を開始しました。

これは、PC、スマホに次ぐ”情報環境”という位置づけなのですが、元は、私の個人的な思いから生まれた商品です。私は子供が3人いるのですが、忙しくてなかなか一緒にいる時間が取れません。なので、家族みんなで楽しんでコミュニケーションを図れるデバイスが欲しかったんです。

popIn株式会社 代表取締役社長 程 涛氏

松村:’18年5月に「現代ビジネス」でpopIn Aladdinのブランドコンテンツを掲載したのですが、ベースとなったのは、程さんのこうした「popIn Aladdin開発における個人的な思い」でした。同時に、せっかくの機会ですので、popInの広告レコメンド事業とも連携して、レポートデータをベースにコンテンツを分析することにしました。

調査内容は、商品購買に直接結びつかない間接コンバージョンにまつわるものや、広告主サイトの内部回遊、読了率とコンバージョンの関係性などです。

やはりブランドコンテンツからの直接の購買コンバージョンは、想定顧客層のターゲティングが効いているFacebookやGoogleアドセンスからのコンバージョンレートと比較しても低かったのですが、今回のブランドコンテンツの役割は、興味や認知拡大など、別のところにありました。

株式会社講談社 第一事業局 コミュニケーション事業第一部 デジタルマーケティンググループ リーダー 松村吏司氏

程:はい。正直、ブランドコンテンツからのコンバージョンは求めていませんでした。何を重要視していたかというと、ユーザーが「popIn Aladdin」で検索をした際に、検索結果の画面に、公式HPだけでなく、第三者視点で書かれた記事が上位に掲出されていることでした。実際に、その目的は達成されました。コンテンツが掲載開始となってから3ヵ月近く経ちますが、現代ビジネスさんのブランドコンテンツは変わらず検索結果ページで上位に掲出され、正しい情報が届けられています。

新たなビジネスモデルの参考にも

松村:こうした目的などは、コンテンツを売るメディア側のセールストークとしても非常に効果的。実際に記事を読んでからどれくらいの期間でコンバージョンしたのかも調べたのですが、最短では当日、最長で76日ほどでした。

また、読了率70%以上の人たちのpopIn Aladdin公式サイト訪問率も高かったので、記事をしっかり読んだ人には態度変容が起こっていたと考えられます。

程:このブランドコンテンツを読んだ方々を世帯年収別に見ると、400〜600万円台がボリュームゾーンでした。ビジネスモデルを変えるのもいいのかなと、これを見て思いました。7〜8万円のものをすぐに買うのは難しいと思うので、月額などでサービス利用料を支払う購読型サブスクリプションモデルを導入するのもいいかもしれません。そういったことを考えるきっかけにもなりました。

「タイアップ記事をより良いものにするために」

松村:こうした点に気づけたのも、ブランドコンテンツ及びその分析の効果だと思います。ブランドコンテンツの根本的な役割は共感や理解の文脈を作ることですが、そのほかにも担える要素として重要な点は、「ブランド・信頼性の担保」です。

検索結果の上位に掲出され、中身を正しく理解してもらうこと、これが今回は一番の目的でした。それから「データ分析による市場調査」は不可欠です。でないとPV/UUに終始する話になり、ブランドコンテンツ本来の価値が提示できません。

そして、ブランドコンテンツ市場をよりよくするためには、メディアとしては当たり前ですが、読者と継続的にコミュニケーションを図り、信頼性を作り上げること。そして、広告主がどのようなプランニングの中でブランドコンテンツ制作を位置づけているかを知ること。パートナーシップをしっかり組むことが大切ですね。

読者へ届ける”文脈づくり”を大切に

最後のパネルディスカッションでは、各セッションの登壇者と、ハフポスト日本版よりCEOの崎川真澄が登壇。事前アンケートで投げられた質問などをテーマに議論を交わした。

福吉氏はブランドコンテンツの価値について「雑誌のタイアップ広告のような文脈を作ることが大事だと思います。雑誌は独自性があり、それを読みにくる読者という建てつけなので、エンゲージメントが高いですよね。そこにはすごく強い関係値があるので、読者の文脈のなかに商品を入れていけば間違いなく伝わる。ウェブでも同じく、メディアの特性と商品のコミュニケーションをシンクロさせてコンテンツを作ることが重要だと思います」と述べた。

ハフポスト日本版CEO崎川は、コンテンツマーケティングにおけるメディアの立ち位置について以下のようにまとめた。

ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社 取締役CEO 崎川真澄

「いまの媒体に求められるのは、広告主側から見て、『この媒体はこういう特徴ある読者集団を持っているから広告を出したい』と言ってもらえる環境を整えることかと思います。たとえば『20代の女性が対象』などとくっきり切り分けられた顧客層想定による広告の出し方は、わかりやすいですが、自社媒体読者の単なる切り売りになってしまいます。

媒体が提供すべきなのは、そういったエクセル表上で表せる数値的な読者像ではなく、”コミュニティ”のような、顔が見えてコメントがもらえる、もう少し原始的なもの。そうした軸を何本も作っていって、『私達の媒体は、こういう人たちにこれくらい支持されているので、そこに入って”仲間”として商品・サービスをアピールしていきませんか』ということなのかと思います。読者のカタマリを作っていく事がいまのデジタルメディアに求められるものなのではないでしょうか」

イベントには約150名が参加した

また、popIn株式会社は同日、アドベリフィケーション計測・対策ソリューションとして、IAS、Maot、Momentumの導入を発表した。同リリース内でpopIn株式会社の高橋大介副社長は「広告を介したコミュニケーションが、生活者にとって”心地よいもの”になること」が求められていると言及。

広告主やメディア、そしてユーザーに心地よいコミュニケーションを届けるために必要不可欠なソリューションを、今後も考えていくという。

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嫌われない広告、嫌われないメディア、嫌われないコミュニケーション……それらを実現させるためには、PVやクリックだけでは図りきれない「価値指標」を見出していくことが求められている。

ハフポスト日本版はこれからも「嫌われない広告」「嫌われないメディア」について考え、ユーザーと「嫌われないコミュニケーション」をとるための立場として、企業や代理店とともに新たなブランド価値をつくっていきます。


Source: ハフポスト