性の話をしたら「ボディタッチやセクハラOK」? それはおかしい。TENGA広報が目指す世の中

株式会社TENGA広報担当の工藤まおりさん、西野芙美さん

性を誰もが楽しめるものに変えたい。その思いで、タブー視されがちな「性の話」をネット上などでオープンに話す女性たちがいる。

アダルトグッズを製造・販売する株式会社TENGAの広報担当者、西野芙美さんと工藤まおりさんだ。

2005年に販売開始したTENGA製品は、これまでに60カ国以上の国と地域で累計7000万個以上を販売。2013年からは女性向けブランド「iroha」も誕生し、アダルトグッズ界のパイオニアとして絶大な支持を得ている。

2人はブランドの広報活動や、Twitterを使った情報発信を積極的に続ける。しかし、時には偏見の目を受ける時もあるという。

性に関する話をしている人は、他人から性的な視線で見られて当たり前、というのはおかしい」。西野さんと工藤さんはそう話す。

なぜ2人はTENGAの広報になった?

工藤まおりさんは、2015年にTENGAに入社した。TENGAやirohaに「救われた」という思いから、ブランドの熱心のファンでもあった。

工藤まおりさん

「小さい時から女性器に触れると、いつも親に怒られていました。でも、『なぜダメなのか』わからなくて。ずっとモヤモヤした気持ちが残っていました。大学生の時は、性の話をしたら『簡単にヤレる女』と偏見を受けて、それにも疑問に感じました」(工藤さん)

そんな時に出会ったのがTENGAの商品だった。マスターベーションのイメージを覆すようなスタイリッシュなデザインに、衝撃を覚えたという。

「『マスターベーションは悪い行為ではないよ』というメッセージを、商品が発しているように見えたんですよね。幼少期の時から抱いていたモヤモヤした気持ちを晴らしてくれたというか、救われた思いがしました」(工藤さん)

大学卒業後は、派遣事業を手がけるリクルートグループの会社で勤めていたが、ある日上司から「アダルトグッズの話をしている時が一番目が輝いている」と言われたことで、TENGAへの転職を決意したという。

西野さんは、性にまつわる話がタブー視されている世の中を変えたいという一心でTENGAに入社した。

西野芙美さん

「昔から言いたいことをハッキリ言うタイプだったんですが、学校生活ではまわりに合わせることに生きづらさを感じていました。性のことについても興味はありましたが、まわりには言いづらかったです」(西野さん)

母校の早稲田大学文化構想学部は、西野さんの「個性」を受け入れてくれる環境だったという。

性について真面目に語り続けるうち、一対一で深刻な性の悩み相談を受けるようになり、「なぜこんなに性にまつわる問題が多いのか?」と疑問に思うようになった。

「いろいろな悩みを聞いて思ったのが、性の悩みがあったとしても、誰にも相談ができないことが問題を大きくしてしまう、ということです。それをどうにかできないか、と思うようになりました」(西野さん)

西野さんは卒業後、出版社に入社。本は問題提起や啓発に最適なツールと考え、人文書の広告宣伝などを手がけていたが、若い世代にリーチしづらいことが悩みだった。

そのタイミングでTENGAの求人募集を見つけて、2017年に転職を決意した。

ネットで「セクハラ」を受ける理不尽さ

メディアに露出し、Twitterなどで情報発信を続けている2人だが、ネット上では心ない言葉や偏見を受けることもある。

「工藤さんをオカズにしています、と言われて、『やめてください』と断ると『すみません、喜ぶと思っていました』って謝られたことがあって。すごくスキンシップをとってくる人に『触らないでほしい』と伝えたら、『エロい話してるからいいのかと思った』ってあまり罪悪感を持っていないトーンで言うんです」(工藤さん)

性やセックスに関する話をオープンにしているから、その人は「エロい女」。エロい女だから、何を言ってもいい。少しくらいならボディタッチをしてもいいし、下ネタを振っても大丈夫。

西野さんや工藤さんは、こんな先入観や勘違いと日々向き合い、”戦って”いる。

「TENGAが介護施設と協業するというニュースがNHKで出た時に、2ちゃんねるでスレッドが立って、『TENGAの広報をやっている女の境遇を考えるとすごくヌケる』みたいなコメントが書き込まれて…『境遇』ってどういうことだ、と思いました」(西野さん)

状況を見かねた西野さんは、こんなツイートを投稿した。

https://platform.twitter.com/widgets.js

ツイートは2万回以上リツイートされ、5万件以上のいいね!が付き、大きな共感と反響を生んだ。

「ツイートがバズって、共感してくださる方がたくさんいたので嬉しかったです。一方で、キツい言葉やネガティブな反応も一部ではありました。なかには、女性から『エロい話をしているんだから、ヌケるとか言われてしまうのは当たり前。嫌ならやめればいい』というようなコメントも届きました」

「でも、性に関する話をしている人は他人から性的な視線で見られて当たり前、という理屈はちょっと理解できません。そこはイコールで結びつけるべきではないと思います」(西野さん)

でも、「男vs女」にはしたくない

西野さんと工藤さんは、ネット上で発信するとき、自分の言葉が「誰か」を傷つけてしまうことはないか、細心の注意を払っている。

さらに、男女分断が起きないよう、「主語」を大きくしないことも心がけているという。

たとえば、匿名で質問の受け答えができるサービス「Peing」で寄せられた質問に答えるとき。質問の中には「男性はお酒を飲めないとダメだと思いますか?」など、性別をベースにした質問も多いという。

しかし西野さんは、『男だから』とか『女だから』とか、主語を大きくすることはしたくない、と話す。

「人によって性的嗜好も考えも別々なので、『女性はこうです』って言い切ってしまうのはおかしいですよね。私のツイートを見た男性が、『女性ってやっぱりそうなんだ』と思ってしまって、結果的に対立構造を作ることに加担してしまうかもしれない」

「だから、『男はこう』『女はこう』とは絶対に決めつけずに、『私はこうだけど、あなたはどう思いますか』って、主語を個人レベルにすることを心がけています」(西野さん)

性を誰もが楽しめるものにしたい

TENGAの目下の目標は、「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」という創業理念を実現していくことだ。

そして、その「誰もが」という言葉には、LGBTなどセクシュアル・マイノリティーの人たちや、障がいを持つ人や高齢者など、たくさんの人が含まれている。

同社は2016年、株式会社TENGAヘルスケアを設立。医療や教育、福祉などの専門家と連携し、性にまつわるあらゆる問題の研究・解決するための取り組みに乗り出した。

その取り組みの成果の一つが、介護施設でのTENGA販売だ。

2018年1月、高齢者介護サービス事業を展開する「いきいきらいふ」との協業を開始。サービス利用者の職員へのセクハラ抑止につなげるため、介護施設でTENGAの販売を始めた。

「実は株式会社TENGAの設立当初から、介護現場で働く人から問い合わせを多数受けていました。セクハラを受けてしまうことがあるから、介護施設にTENGAがあったら嬉しい、と。ただ、当時は注目商品を送ることを申し出ても、施設長からNGが出てしまうこともありました」

「今年に入って、ようやく介護現場にもサービスを展開できるようになりました。介護現場でのセクハラに対する問題意識が高まり、高齢者の性生活についても真剣に考える機会が増えたことで、ようやく変わってきたのかな、と実感しています」(工藤さん)

介護事業に従事している人向けのセクシュアル研修なども行なっている。

ほかにも、性教育の遅れや「男性不妊」の認知度が低い現状を訴えるために、調査やサービスの開発なども積極的に行なっている。

10月下旬には、男性の不妊リスクを解消するために、医師監修のもと開発された精子の育成をサポートする栄養機能食品「精育支援サプリメント」を発売。

TENGAの新製品「精育支援サプリメント」

世界保健機関(WHO)の調査によると、不妊の原因の約半数は男性側にあるとされるが、不妊は未だに女性側の問題と見なされがちだ。サプリメントなど、男性の妊活をサポートするアイテムを通して、「男性不妊」の啓発を続けていくという。

設立当初は、サービスを届ける対象を”広げる”ことが難しい状況でした。でも今は、少しずつですが性に関するあらゆる問題に目が向けられるようになっています」

工藤さんはそう話す

「今後は『誰もが性を楽しめる』を実現するために、より多くの人に向けてメッセージを発信して、できる限り多くのニーズに応えられる商品を届けたりしていきたいと思います」

Source: ハフポスト