「結婚適齢期」プレッシャーは、あなたのすぐ隣にいる。

みんなって誰だ

2017年秋頃、ロサンゼルスで働いている友人を訪れた時だった。満面の笑みで私を迎え入れた彼女はこう言った。

「こっちに来てから何も欲しいものがなくなった。日本にいる時は何歳までに結婚とかのソーシャルプレッシャーが大きかったけど、今はこの青い空を見ているだけで本当に幸せ」

吹っ切れた彼女の表情はまさに秋空のように晴れ晴れしていた。同時に私は重大な事実に気がついてしまった。

そう、日本に存在する大きい、大きい「結婚適齢期」というソーシャルプレッシャーに!

なぜロサンゼルスまで行って、こんな重大なことに初めて気付いているんだ!! 自分! 西海岸特有のカラッとした風に包まれながら、私の心はどこかジメッとしたのを覚えている。

ここから私の結婚適齢期信仰を解明する長い旅が始まった。まるで映画「スタンドバイミー」で4人の少年が死体探しの冒険に出かけるように。

Photo Taken In United States, Venice

日本列島に横たわる大きな岩盤

そんなこんなで日本に帰ってからというもの、突如湧き出た怒りと、溢れ出る好奇心に突き動かされながら「結婚適齢期」について調べてみた。そこで発見してしまったのだ、驚愕のデータを。

これは、私が研究活動に参加している博報堂生活総合研究所が2年に1度、20~69歳の男女を対象に実施している「生活定点」調査の結果だ。「女性に結婚適齢期はあると思いますか?」という質問に対して、「ある」と答えた人の割合は、最新の2018年で7割近くにのぼる

しかし、注目したいのは最新の数字だけではない。皆さん、おわかりだろうか。1992年から”それ”は概ね60%台を緩やかに上下しながらも、まるで岩盤のように存在していたのだ。(少しは下がってもいいんじゃないの!!!!!!!!!さ・す・が・に。)

ちなみにこのデータは、性別、年代別でも傾向に大差は見られない。

一億総活躍社会、共働き世帯は1,000万を超え(2018年厚生労働省発表データ)、女性の社会進出が声高らかに謳われる中で、この反り立つ壁ならぬ結婚適齢期「岩盤」の存在は驚くべきことだ。

もう一つ面白いデータをご覧いただきたい。

これは20~69歳で「結婚適齢期はあると思う人」が考える女性の適齢期年齢の推移だ。2000年の26.1歳からなだらかに上昇し、最新の調査では27.4歳となっている。

お次はこちらだ。今お見せした女性の適齢期年齢の推移に、実際の女性の平均初婚年齢の推移(データは2016年まで)を足したものだ。

見事にシンクロしている。

2000年の段階では適齢期と実際の初婚年齢の差は約1歳。それが2016年には約2歳に差が開いているものの、どちらも一定のペースで上昇している。

やや飛躍した仮説だが、この適齢期年齢と初婚年齢の間の1~2年のうちに、女性は結婚に向けたクロージング活動を始めるのかもしれない。私の周囲でも、このような流れがオーソドックスなパターンとして存在しているようだ。私なりに、適齢期と初婚年齢の差のリアルについて紐解いてみたい。

周囲から襲いかかる「そろそろ」という集団意識を感じて、彼氏と「そろそろ結婚しない?」コミュニケーションを始める。 部屋を結婚情報誌祭りでレイアウト 最後の手段:「結婚してくれないなら別れるわ」 彼氏、降参。プロポーズ “I Said Yessssss!投稿”をインスタグラムに…。

このパターンに持ち込むとき、私の周囲の女性たちはみんな、普段では想像もつかないような「腕力」を発揮しているように思われる。

世界の適齢期信仰を覗いてみた

こうした「岩盤」は日本以外にも存在しているのだろうか?

3度結婚をしているドナルド・トランプ氏を大統領に選んでいるアメリカは如何なものだろう?結論から先にいこう。アメリカにもしっかりと存在していた。Pew Research Centerの調べによると、近年上昇しているものの平均初婚年齢は女性が26.5歳、男性が28.7歳となっている。日本の平均初婚年齢と比べると若干低めになっているのが特徴的だ。

またAmerican Psychological Association(アメリカ心理学会)の調べによると86%のアメリカ人女性が結婚時に一生添い遂げると考えている。逆に残りの14%は心では永遠の愛を誓っていないということだろうか。

86%という数字は「低すぎる」と問題提起し、25歳から35歳までには結婚をしなければいけないプレッシャーの存在を指摘しているジャーナリストもいる。

ところかわって、愛の国・フランスでは結婚制度が3種類ある。①Mariage(結婚)②PACS(日本でいう事実婚のようなもの)③Union libre(同棲)だ。ヨーロッパ在住歴が長い知人によると、様々なパートナーのあり方が認められていて、「結婚」という1つの概念に囚われていないから「結婚しないの?」という質問自体が珍しいということだった。

但し、女性が子供を生むタイムリミットはある程度意識されているようで、そこが一種のバーになっている模様。40歳くらいまでは「パートナーはいないの?」や「子供はいないの?」という質問はよく聞くとのこと。日本よりは”個”の選択を尊重している印象は受けるが、こちらにも「子供を生む」という文脈での適齢期信仰はありそうだ。

アジアのご近所、シンガポールについても調べてみた。博報堂生活総合研究所アセアンの2018年「アセアン生活定点」調査(20~59歳男女)によると、なんと90%以上が「女性に結婚適齢期はある」と答えており、日本よりも数値が高い。ダイバーシティに富み、国際都市のイメージが強いシンガポールのこの数字は驚愕であろう。

隣のお空は青い?

日本人の友人にとってロサンゼルスの空が青かったように、もしかしたら他の誰かにとっては、私の見上げている東京の空は青いのかもしれない。隣の芝生は青く見えるとはこのことだろうか。

私自身も、今回明らかになった適齢期信仰という煩わしさに対して、どのように対峙するのが良いのかを考えてみたが、結局のところ、適齢期信仰を無視するのが良いのではないだろうか。

「適齢期信仰を無視する」とはつまり、適齢期信仰をあくまで一つの考え方として受け止めたうえで、恐れないということ。新たな自分なりのコンセプトを自分で創り上げ、自分で自分にプレッシャーをかけない。いつ、誰と結婚するのかは自分が決める。

映画「イット/それが見えたら、終わり」をご存知だろうか?子供を狙った連続殺人鬼のピエロは、子供たちが最も恐れるものに変貌自在に姿を変え、油断して近寄ってきた子どもたちを殺していく。だがピエロの最大の弱点は、狙った獲物に恐怖心を持たれないことだったのだ。これに気付いた子どもたちは最後に、決してひるまぬ態度でピエロとの戦いに勝ち、ピエロは消滅するというストーリーだが、これにまさしく近いようにも感じる。

ここ数年、「自分婚」がアメリカを中心に流行っているらしい。自分婚とは言葉通り自分自身と結婚をすることだ。あたかも普通の結婚式のように式をあげて、中には自分に贈る指輪までも準備している人もいるというから驚きである。

「自分を幸せにすること」を誓うことで何かを決意し、気持ちに区切りをつける。まさに自分で自分にプレッシャーをかけないことのシンボリックアクションに感じる。

Reflection Of Bride Applying Lipstick While Standing In Front Of Mirror

結婚形態は多岐に渡っており、最近ブロガーのはあちゅうさんで話題になった「事実婚」や住居は別にしながら結婚の形をとる「通い婚」などがあるという。これは1つの適齢期信仰からの解放運動なのかもしれない。

適齢期信仰からの抜け方は?

冒頭のロサンゼルスの友人は、住む場所を変えることでソーシャルプレッシャーから解放された部分があるかもしれないが、多くの人は、簡単に住む場所を変えることは難しい。

今いる場所で、どう「みんな」の結婚適齢期から解き放たれるか。簡単に答えが出るものではないが、大事なのはあくまでも「自分が」幸せな人生を選択すること。その意識をインストールするだけで、あの”岩盤”に少し、希望の亀裂が入るような気がする。

執筆を担当した人

奥田さら

奥田さら(博報堂ストラテジック・プランニング局 リサーチャー)

新卒で投資銀行にて資金調達業務に携わる。2018年博報堂入社。

IT、食料、トイレタリーなど様々な企業の事業・コミュニケーション戦略立案に携わる。

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Source: ハフポスト