長崎の企業が損害賠償を求め提訴!クールジャパン機構は一体何を目指してきたのか

長崎の企業が損害賠償を求め提訴!クールジャパン機構は一体何を目指してきたのか

 13日、長崎の企業グループで作る「グリーンティーワールドホールディングス」が会見を開き、「クールジャパン機構」に対し約4000万円の損害賠償を求める訴えを起こしたことを明らかにした。

 同社は2015年、クールジャパン機構と共にアメリカで「日本茶カフェ」事業をオープンさせたが、赤字などを理由に機構側が運営会社を清算しようとしたという。前田拓代表取締役は会見で「クールジャパン機構による本事業に対する理不尽かつ不当な介入の実態を知って頂き、他の事業にもこの実態をお伝えしなければと」「損害賠償請求と株主間契約の無効を確認する裁判。クールジャパン機構に対して、詐欺ということで提訴した」と訴えた。

■”失敗続き”との批判も

 外国人が”クール”だと思う日本の商品や文化を海外に発信し、マーケットの拡大や訪日外国人の増加につなげようという「クールジャパン」。アベノミクスにおける成長戦略の一つであるこの事業を支援するため2013年に設立されたのが、”官民ファンド”のクールジャパン機構だ。出資金693億円のうち586億円を政府が、そして107億円をみずほ銀行、三井住友銀行、京葉銀行、JTB、大日本印刷、バンダイナムコHD、三越伊勢丹HD、電通、博報堂DYグループなどの民間企業が負担している。これまで合計30件のプロジェクトに対し、合わせて約634億円の投融資がなされてきた。

 しかし中には”失敗”と言えるようなものもあり、日本のブランドや物産品に特化、鳴り物入りでオープンしたマレーシアの「イセタン・ザ・ジャパンストア・クアラルンプール」は昨年度は5億円の営業赤字となるなど、会計検査院のデータでは2017年3月末時点では計17件、約310億円の投融資で約44億円の損失が出ている。

 そのため、クールジャパン機構の事業内容や投資の結果に対し、疑問視する声も少なくない。一方、成功例とされるのが、とんこつラーメンで知られる「一風堂」の親会社「力の源ホールディングス」への出資で、欧米豪の主要都市で日本酒なども扱い日本食ファンを獲得、食産業の海外市場拡大の支援に成功。同社が株式上場したことで、10億円を超える売却益を得ている。

 リディラバ代表の安部敏樹氏は「経済産業省内では、これだけの規模で投資ができる機構を立ち上げるところまで政策的に持っていた、ということで評価されている。しかしそれはアウトプットよりも前の話であって、世間からすれば現時点では赤字が出ているし、これだけの税金が使われている。その認識のズレがあると思う。ただ、あまりにも投資が上手く行き過ぎると、今度は”民業圧迫”だと言われてしまう可能性もある。儲かっても怒られるし、儲からなくても怒られるというのが、行政の難しいところ。だからこそ利益よりも政策的な意義の方が優先されている」と指摘する。

■目的はどこにあるのか?

 大正大学の田中俊之准教授は、「クールジャパンというものが、最終的に何を目指しているのがわかりにくい」と指摘。「日本文化を波及させたいのか、それとも儲けを出したいのか。儲けであれば、こちらが売りたいものではなく、海外の方が良いと思うものを出せばいいということになる。しかし、それで日本に来てくれる人が増えればいいのかと言えば、そうではないと思う。例えば外国人に人気だったマグロの競りが豊洲新市場でガラス越しになったのは、間近で見られることでの弊害もあったからだ。目的は人が来た、儲けが出た、それだけではないはずなので、成功したかどうかで判断するのはまずい気がする」と話す。

 「”外国人がクールだと思うもの”というところがポイントだし、出身国によっても観たいものが違うのに、”外国人”と一括りにしてしまうことにも問題がある。日本人はターバンを見て”インドっぽい”と思うかもしれないが、実際に巻いているインド人は2%しかいない。つまり、外国の方が日本っぽいと思うもの寄せすぎてしまうと、元々日本にあった良いものが失われてしまう危険性がある。メロンパンが人気だからと、浅草ではそれが”名物”になっている、おかしな話だ」。

 東京外国語大学大学院の渡邊啓貴教授も「今は、珍しいものを安易に世界に発信していて、中身のない”かっこいいジャパン”で終わっている。似たようなコンテンツが多く、日本の独特さが生かされていない。長期的な視点に立った計画、世界に通用するナショナルブランドを育てる必要がある。日本がどんな国かを分かってもらう戦略が必要」と指摘している。

■新たなものを作るのと、すでにあるものを伸ばすという違いも

 訪日外国人向けのメディア『MATCHA』のシーソンクラム・カオ統括マネージャーは「私はタイ出身だが、日本人が思う日本と、我々が思う日本というのは全然違う。自分の国の良さを伝えたいという気持は分かるが、そこに外国人が見たいものとのギャップがあって改善されていない。雪が見たいというタイ人も多いし、深い歴史や文化、お城よりも、まずはインスタ映えなどが重要という人もいる。クールジャパン事業としてインフルエンサーを日本に呼び込んでいて、いい写真がアップされているが、自分だけがきれいに写っていて後ろの景色は全く見えないものも多い。グリーンティーワールドホールディングスの問題についても、投資の方針を決めているが現場のことを理解しているのか、そのギャップが問題だと思う」と話す。

 「新たなものを作るのと、すでにあるものを伸ばすという違いもある。一風堂の場合、もともと日本で人気があったものに投資して拡大させるというイメージだったと思う。日本に来たら必ず食べるというくらい、タイ人にも人気があった。日本のことを全て理解してもらうためにはフェーズがあって、今はまだ入口の段階だ。良い取り組みを色々やってきたのに、伝わっていないことのがもったいない。シンプルに彼らが期待していることを、色々な引き出しから差し出せばいいのではないか」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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Source: ハフポスト